日銀利上げが突きつける「不動産保有リスク」の現実
日本銀行がマイナス金利政策を解除し、追加利上げへ舵を切ったことで、レバレッジを活用してきた不動産投資の収支に直接影響が及んでいます。
不動産投資ローンの多くは、短期プライムレートなどに連動する変動金利で実行されています。基準金利の上昇は返済額の増加に直結し、借入金利が仮に0.5%上昇した場合、多額の債務を抱える投資家ほど受ける打撃は大きくなります。
たとえば、借入残高1億円・残存期間30年の条件では、金利が年1.5%から年2.0%へ引き上げられるだけで、年間の返済負担は約30万円増加。融資比率(LTV)を高めに設定していた物件ほど、キャッシュフローが急速に圧迫されることになります。
コスト増加の要因は借入金利だけではありません。総務省統計局『消費者物価指数(CPI)』が示す通り、人件費やエネルギー価格の高騰に伴い、各種サービス価格や修繕関連費用も持続的に上昇しています。さらに、国土交通省『建設工事費デフレーター』でも建築補修コストの上昇が示されており、共用部の日常管理費、退去時の原状回復費用、長期修繕計画に基づく工事費などの支出が膨らむ一方です。
物価上昇局面では賃料の引き上げによるコスト吸収が期待されますが、既存入居者に対する賃料改定は容易ではなく、契約更新期を待つタイムラグがどうしても生じます。金利と維持管理費の上昇が先行するため、収支が悪化する期間を避けられません。低金利を前提に組み立てられた長期保有戦略は、金利とインフレの同時進行という環境変化によって、想定以上に収益性が悪化するリスクをはらんでいます。
「高値圏」の今がチャンス…富裕層が動き出した資産の再構築
保有継続に伴う収益悪化リスクが高まる一方、売却市場に目を向けると、投資家の判断にも変化が表れています。
日本不動産研究所『不動産投資家調査』によると、今後1年間の方針として「既存所有物件を売却する」と回答した割合は、2021年10月の19%から、2024年4月には25%、2025年4月には29%へと上昇しました。2026年4月も28%と、2021年の水準を9ポイント上回っています。
この推移が示しているのは、既存物件を保有し続けることだけが、不動産投資の選択肢ではなくなっているということです。
日銀のマイナス金利政策解除を経て、借入金利の上昇が現実の経営課題となるなか、投資家には保有物件の収益性を改めて見極めることが求められています。賃料収入を得ながら長期保有するのか、価格が高水準にあるうちに売却して利益を確定するのか。物件ごとの収支や将来の修繕負担、借入金の返済計画を踏まえた判断が、これまで以上に重要になっています。
不動産価格の動向も、売却を検討するうえでの重要な判断材料です。国土交通省『不動産価格指数』では、マンションをはじめとする住宅価格が長期的に上昇してきたことが確認できます。保有物件の含み益が膨らんでいる投資家にとっては、その利益を確定し、資産構成を見直すことも合理的な選択肢となります。
売却によって得た資金は、借入金の返済に充てて財務基盤を整えることも、手元資金として確保し、次の投資機会に備えることもできます。すべての物件を手放す必要はありません。収益性や将来性を見極め、保有する物件と売却する物件を選別する。それが、金利上昇局面における資産戦略の見直しです。

