(※写真はイメージです/PIXTA)

「高額な買い物はしていない」「日常の節約を心がけている」にもかかわらず、なぜか預金口座の残高が想像以上のスピードで減っていく――。こうした事態の背景にあるのが、近場での都度買いや利便性を優先した買い物といった「無意識の小額支出」の積み重ねです。本記事ではFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が、佐々木夫妻(仮名)の事例とともに、家計の落とし穴について解説していきます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。

「贅沢なんてしていないのに…」気づけば貯蓄が激減

ところが、退職から5年ほどが経過したころ、正夫さんは預金残高を見て驚きました。1,100万円ほどあった貯蓄が、600万円を下回っていたのです。

 

「おかしいな。そんなに使った覚えはないんだけど……」

 

夫婦が暮らしているのは住宅ローンのない一戸建て。車も軽自動車が1台あるだけです。高級な洋服を買うわけでも、頻繁に外食するわけでもありません。旅行も年に2回。航空券はマイルを使っているため、宿泊費や現地での食事などを合わせても、年間の自己負担は10万円程度に抑えていました。

 

それなのに、預金残高は想像以上の速さで減っていたのです。その後も生活を大きく変えられないまま、73歳になった正夫さん。ついに貯蓄は300万円を下回ってしまいました。

 

「このままだと、遠からず破産してしまうんじゃないか……」

 

不安になった正夫さんは、生活費を詳しく調べることに。すると、予想外の支出が浮かび上がってきます。

 

それは、毎日のコンビニでの買い物でした。夫婦は朝食用のパンやコーヒー、昼食のお弁当、夕食のお惣菜などを、ほとんど近所のコンビニで購入していました。コンビニで購入した食材を使って自炊することもありますが、少量の野菜や肉、調味料なども、その都度コンビニで買い足す習慣がついていたのです。さらに、正夫さんが毎晩楽しみにしているウイスキーや、おつまみもコンビニで購入していました。

 

「そういえば、毎日2,000円とか3,000円とか、普通に使っているな……」

 

手元のレシートを集め、カードの利用明細を確認してみると、食費と酒代だけで月11万円を超える月も珍しくありません。年間では130万円以上もの支出です。

 

自宅から少し離れたところにはスーパーマーケットもありましたが、「車を出せばガソリン代もかかるし、コンビニなら歩いていける。それにポイントも貯まるから」と考えて、スーパーに行く機会は少なくなっていました。

 

コンビニで買い物をするたびに貯まるポイントに目を奪われ、肝心の買い物代金を十分に意識していなかったのです。

 

もちろん、貯蓄が減った原因はコンビニだけではありません。

 

年金収入27万円は、税金や社会保険料が差し引かれる前の金額です。手取りで使えるお金は、それより少なくなります。

 

また、食費以外にも、光熱費、通信費、医療費、日用品、車の維持費などがかかります。夫婦の支出を洗い出すと、日常的な生活費だけで月30万円前後になることもありました。

 

さらに、住宅購入後には給湯器の交換や外壁の補修などでまとまった費用が発生。軽自動車の買い替えも重なり、支出を貯蓄から補っていたため預金残高は年々減少していたのです。

 

「これから先、病気になったり、介護が必要になったりしたらどうするんだ……」

 

正夫さんは、年に2回の旅行を当面取りやめることにしました。これまで貯めたポイントやマイルはまだたくさん残っています。しかし、航空券をマイルで手配できても、旅先での宿泊費や食事代がかからなくなるわけではありません。

 

夫婦は旅行を楽しむためにマイルを貯めていたはずなのに、気づけば旅行に行くことをためらうようになってしまいました。

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