100万円を援助後、孫の反応
「ありがとうって、これだけなのかしら……」
スマートフォンの画面を見つめながら、Aさん(76歳)は小さくため息をつきました。画面に表示されているのは、「ありがとう」の文字が入ったLINEスタンプです。送り主は孫。先日、大学進学のために100万円を援助したところでした。
孫が大学に入学すると聞き、「それなら、おばあちゃんが100万円出してあげる」と申し出たAさん。Aさんは若いころ共働きを続けたかいあって、持ち家に住みながら毎月13万円の年金も受け取っています。3,000万円ほどの貯蓄があり、経済的な不安はありません。100万円は決して小さな金額ではありませんが、孫の新生活を応援したい、かわいい孫のためなら惜しくないという気持ちからでした。
ところが、援助したあとに届いたのはLINEスタンプ一つだけ。電話もなければ、直接お礼をいいにくることもありません。
「最近の若い子は、こういうものなのかしらね」
孫に悪気がないだろうことはわかっています。自ら援助を申し出たのですから、見返りを求めるのも違う気がします。
それでも、どこか釈然としないまま、Aさんはスマートフォンの画面からしばらく目を離せませんでした。
息子はおばあちゃん子…自分も孫と絆を深めたい
Aさん夫婦は、当時としては珍しかった夫婦フルタイムでの共働きを長年続けてきました。7歳年上の夫は3年前に亡くなり、Aさんは、いまは一人で暮らしています。
子どもは息子が一人。2人とも仕事で忙しかったため、子育てはAさんの母親に任せっきりでした。食事を息子に作ってあげたことは数えるほどしかなく、仕事から帰るころには、母親が息子に夕食を食べさせてくれている。そんな毎日でした。
その結果でしょうか。息子は大のおばあちゃん子に育ちました。大人になったいまでも、息子は昔食べた母親の料理を懐かしがります。
「ばあちゃんの作ってくれた唐揚げとおはぎ、また食べたいな」
母親が息子を育ててくれたからこそ、自分は仕事を続けることができた。「でもお金を出していたのはわたしでしょう?」。Aさんには、そんな心の葛藤も。
「もしかしたら、わたしは仕事を続けることと引き換えになにか大切なものを失ってしまったのかしら……」
Aさんは、大人になった息子からそんな何気ない言葉を聞く度に、行き場のない気持ちを抱えていました。
「息子とは十分に過ごせなかった時間を、せめて孫とは共有したい。自分も孫にとって、思い出に残る存在でありたい」
100万円の援助には、そんな思いも込められていたようです。
