会社は「赤字」ではなく「現金が尽きたとき」に倒産する
今回の事例で重要なのは、会社は赤字ではなく、現金が尽きたときに倒産するという点です。
決算書の利益と現金の増減は一致しません。田中さんの会社で、簡易的なキャッシュフロー(現金の増減)を計算してみましょう。
=100万円+200万円-480万円=-180万円
減価償却費は損益計算書では経費として引かれていますが、今年お金を払ったわけではないので、キャッシュフローを計算するときは足し戻します。逆に借入れの返済は損益計算書では経費になりませんが、現金は出ていっています。そのため、100万円の黒字でも現金は1年で180万円減っていたのです。
倒産に向かう典型的な流れはこうです。売上が落ちて現金が減り、借入れで穴埋めする。返済が重くなって現金の減り方が大きくなり、やがて融資が通らず支払いができなくなる。その出発点は販売不振です。東京商工リサーチの調査では、2025年1〜10月に倒産した設立10年未満の企業の約7割が販売不振を原因としています。
私はこれまで300社以上の小さな会社を見てきましたが、毎月の簡易キャッシュフローを把握している経営者はほとんどいません。計画がない、数字を見ていない、帳簿の数字もどんぶり勘定。この3つに当てはまる会社は、倒産の前兆があっても気づきにくいのです。
黒字倒産を防ぐために、毎月見ておきたい数字
今回のようなトラブルを防ぐには、会社の現状を数字で把握することが欠かせません。
まずは次の3つから始めましょう。
1. 売上だけでなく、利益と現金までを計画する
1つ目は、売上だけでなく、利益と現金まで計画することです。売上の目標ばかりを追いかけると、値下げや設備投資で経費が増え、利益が残りません。粗利益と最終利益、返済後に残る現金まで、1年分でよいので計画を立てましょう。
2. 毎月の簡易キャッシュフローを計算する
2つ目は、毎月の簡易キャッシュフローを計算することです。資金繰り表まで作らなくても、先ほどの計算式で毎月確認するだけで、現金が減っている兆しにいち早く気づけます。
3. 帳簿を正しくつける
3つ目は、帳簿を正しくつけることです。取引先ごとの売掛金の残高と、月末の在庫を毎月集計しましょう。会社と個人のお金を分けることも大切です。試算表を正しく作れれば、粗利益率の低下にもすぐ気づけ、銀行からの評価も高まりやすくなります。
なお、苦しいからといって売上や在庫を多く見せる「粉飾決算」は、金融機関をだます行為です。絶対にやめましょう。
このように、追いかける数字を売上から利益や現金に変えるだけでも、会社のキャッシュフローは改善に向かいます。まずはそこから始めてみてください。
自社の数字に不安がある方は、早めに税理士に相談し、毎月の数字を一緒に確認する体制をつくることをおすすめします。
板山 翔
スモールイノベーション株式会社 代表税理士
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