「増えることばかり考えていた」半年後に気づいた資金の使い道
「銀行の残高が減っているのを見ると、不安になるんです。投資信託はまだ持っていますから、全部なくなったわけではないんですけどね」
誠一さんが後悔したのは、値下がりそのものに加え、運用を始める前に資金の使い道を十分に考えていなかったことでした。
退職後、妻とは自宅の浴室を改修する話をしていました。古くなった給湯器の交換も必要で、合わせて200万円ほどの出費を見込んでいたそうです。
「そういうお金も含めて、何となく退職金で払えばいいと思っていました。でも、その退職金の多くを投資に回してしまったんです」
預金は約1,300万円残っているため、工事費を払えない状況ではありません。ただ、手元の現金を減らすことにも抵抗を感じるようになっていました。
金融庁『NISA口座の利用状況調査(2025年6月末時点)』によると、NISA口座数は約2,696万口座、制度開始からの累計買付額は約63兆円に達しています。投資を活用する人が増える一方、金融庁は投資信託などには元本割れの可能性があり、長期・積立・分散投資によってリスクを抑えることが重要だと説明しています。
誠一さんは、投資信託の評価額を毎日のように確認するようになりました。
少し値上がりすると安心し、翌日に下がると落ち込む。妻からも「そんなに気になるなら、最初から無理をしなければよかったのに」と言われたそうです。
「妻の言う通りです。投資することばかり考えて、どのくらい減っても大丈夫なのか、ちゃんと考えていませんでした」
その後、誠一さんは金融機関に相談し、保有している商品の値動きや費用、売却時の注意点などを改めて確認しました。
現時点では慌ててすべて売却せず、今後の生活費や住宅の修繕費を整理したうえで、運用額を見直すつもりです。
「投資が悪いとは思いません。ただ、私には1,200万円という金額が大きすぎたんでしょうね」
誠一さんは、半年間の経験をそう振り返ります。
退職金を運用する際には、期待できる利益だけでなく、値下がりした場合の生活への影響も考える必要があります。近い将来に使う予定の資金を確保し、無理なく保有できる金額を見極めることが、老後の資産管理では大切になるでしょう。
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