〈退職金2,100万円〉〈年金月24万円〉老後のご褒美「ファーストクラスでヨーロッパ周遊」から帰国。家族LINEで山ほど写真を共有した60代元国家公務員夫婦だったが…1週間後「家族には内緒にすればよかった」と後悔のワケ【FPが解説】

〈退職金2,100万円〉〈年金月24万円〉老後のご褒美「ファーストクラスでヨーロッパ周遊」から帰国。家族LINEで山ほど写真を共有した60代元国家公務員夫婦だったが…1週間後「家族には内緒にすればよかった」と後悔のワケ【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

退職金を受け取り、住宅ローンを完済し、長年の仕事からも解放される。「やっと夫婦で好きなように生きられる」――現役時代にがむしゃらに働いてきた人ほど、その解放感は大きいものです。しかし老後の家計は、外からではなく“家族の内側”から崩れることがあります。本記事では波多FP事務所の波多勇気氏が、中村和彦さん(仮名)の事例から老後のマネープランを考えていきます。※紹介する事例は、相談者より許可を得て、プライバシー保護の観点から相談者の個人情報および相談内容を一部変更して記事化しています。

帰国から1週間後、妹からの電話

帰国からちょうど1週間がたった日のことです。久美子さんから電話がかかってきました。

 

「お父さんが家で転んで、骨折して入院したの」

 

和彦さんの父・茂さん(仮名)は89歳。地方の実家で一人暮らしをしています。若いころから酒店を営んでいたため、年金は国民年金だけで月6万円ほど。預金は300万円ほどあるといいます。これまでは、近くに住む久美子さんが買い物や通院に付き添ってきました。

 

医師からは、退院しても一人暮らしに戻るのは難しいと告げられたそうです。週末、病院の面談室で開いた家族会議で、久美子さんは切り出しました。

 

「施設に入ってもらうしかないと思う。お兄ちゃん、費用を出してくれるよね。ファーストクラスでヨーロッパに行く余裕があるんだから」

 

和彦さんは、言葉に詰まりました。長男でありながら、父のことは何十年も妹に任せきりだったからです。久美子さんが候補に挙げたのは、月約22万円の介護付き有料老人ホーム。茂さんの年金を差し引いても、毎月16万円が足りません。

 

「わかった。俺が出すよ」

 

その場では、そう答えるしかなかったといいます。

 

帰りの車のなかで由美子さんは黙り込み、帰宅するとすぐに電卓を叩きはじめました。いまの生活費は月約30万円。年金の手取りは月約21万円で、毎月9万円の赤字です。そこに16万円の援助が加われば、毎月25万円、年間300万円が貯蓄から出ていくことになります。

 

「旅行のあとの貯蓄は2,900万円。これじゃ、10年ももたないじゃない」

 

2人が筆者の事務所を訪れたのは、その数日後のことでした。

夫婦の本当の資産寿命

筆者はまず、夫婦の収支を確認しました。総務省の「家計調査(2025年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は月26万3,979円です。中村さん夫婦の生活費はこれより多めですが、交際費や趣味の支出を考えれば、無理に削れる金額ではありません。

 

由美子さんの計算には、一つ見落としが。由美子さんは65歳になると自分の年金を受け取れるようになるため、2年後には、加給年金がなくなる分を差し引いても世帯の年金は増えます。手取りで月25万円ほどになり、赤字は月5万円程度まで縮まる見込みです。

 

物価の上昇などを考えない単純計算で、援助をしない場合に90歳までに取り崩すお金は合計で約1,500万円。2,900万円の資産のうち、1,300万円ほどを介護や医療、住まいの修繕に備えて残せる計算です。

 

ところが、月16万円の援助を続けると状況は一変します。あくまで統計上の目安ですが、厚生労働省の「令和6年簡易生命表」では、89歳男性の平均余命は4.62年です。援助が5年ほどで終わったとしても、90歳の時点で残る資産は400万円ほど。夫婦2人の介護に備えるには足りません。茂さんが長生きして援助が10年続けば、和彦さんが81歳になる年に資産は底をつきます。

 

「お義父さんがいつまで施設にいるのかは、誰にもわかりません。そこが一番怖いんです」

 

由美子さんの不安は、大げさなものではありません。問題は援助そのものよりも、上限も期間も決めないまま約束してしまったことにあります。

次ページFPからの3つの提案

※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧