「ここなら静かに暮らせる」夫婦で選んだ田舎の一軒家
「こんなはずじゃなかったんです。最初は、私も楽しみにしていたのに……」
そう話すのは、68歳の明子さん(仮名)です。夫の和夫さん(69歳・仮名)と、半年前に首都圏から地方の山あいの町へ移住しました。
夫婦の年金収入は合計月約19万円。移住前の預貯金は約1,200万円で、住んでいたマンションを売却した資金を使い、中古の一戸建てを購入しました。
「夫は昔から、退職したら畑仕事をしながら静かに暮らしたいと言っていたんです」
和夫さんが見つけたのは、庭と小さな畑が付いた築30年ほどの住宅。価格は約650万円でした。
マンションの売却代金から購入費用や引っ越し代などを支払い、手元には従来の預貯金を含めて約1,200万円を残せました。
明子さんも、庭で花を育てたり、季節の野菜を収穫したりする生活に憧れていました。
「見学に行ったときは景色もきれいで、空気も澄んでいて。ここならのんびり暮らせそうだと思ったんです」
ただ、最寄りのスーパーまでは車で約20分。総合病院へは約40分かかります。路線バスはあるものの、便数が少なく、日常の買い物には使いづらい環境でした。
明子さんは運転免許を持っていますが、長年ほとんど運転していません。移住後の買い物や通院は、和夫さんが車を出すことになりました。
「夫は運転が好きですし、最初は何も困らなかったんです」
移住してしばらくは、夫婦で畑を耕し、近所を散歩する日々を楽しんでいました。
ところが2ヵ月ほどたつと、明子さんは外出のたびに夫の予定を確認することに窮屈さを感じ始めます。
「ちょっと買い物に行きたくても、一人では行けないんです。夫が畑仕事をしていると、終わるまで待つしかありません」
以前は徒歩圏内にスーパーや薬局があり、思い立ったときに出かけられました。移住先では、牛乳を買い忘れただけでも、翌日の買い物まで待つことがありました。
それでも明子さんは、慣れれば何とかなると思っていたそうです。
そんな生活が一変したのは、移住から半年後のことでした。
