(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが住宅を購入する際、親が頭金などを援助することがあります。少しでも負担を減らしてあげたいと思う一方、親自身も老後の生活を支えていかなければなりません。特に年金生活に入ってからは、まとまった貯蓄があっても、将来必要になる金額を正確に見通すのは難しいものです。親子間でお金の考え方が食い違い、思わぬ衝突につながることもあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「300万円くらい、出してもらえない?」息子からの相談

「母さんには余裕があるだろ? 300万円くらい、何とかならないかな」

 

74歳の千鶴子さん(仮名)は、息子からそう言われたとき、すぐには返事ができなかったといいます。

 

千鶴子さんは長年会社員として働き、現在は月約20万円の年金を受給しています。住宅ローンを完済した一戸建てで一人暮らしをしており、預貯金は約3,500万円です。

 

息子の亮介さん(46歳・仮名)は、妻と小学5年生の娘、小学2年生の息子との4人暮らし。これまでは賃貸マンションに住んでいましたが、子どもたちの成長を機に、一戸建ての購入を検討していました。

 

「息子が家を買うことは、私もうれしかったんです。最初は間取りの相談をされたりして、一緒に楽しみにしていました」

 

亮介さんが購入を希望していたのは、価格約5,200万円の新築住宅です。

 

住宅ローンを組む予定でしたが、購入時の諸費用や引っ越し代、家具の買い替えなども考えると、手元の資金をもう少し残しておきたいというのです。

 

「それで、頭金として300万円だけ援助してもらえないかって」

 

千鶴子さんは以前、老後の生活費について息子に相談したことがあり、亮介さんは母親に3,000万円以上の貯蓄があることを知っていました。

 

「母さんは年金もあるし、家のローンもないだろう? 300万円出しても、まだ十分残るじゃないか」

 

確かに、3,500万円から300万円を出しても、3,200万円は残ります。千鶴子さん自身、それですぐに生活に困るとは考えていませんでした。

 

ただ、数年前に自宅の屋根や外壁を修繕した際には約180万円かかっています。今後も家の維持費が必要になるでしょう。

 

「今は元気だけど、いつ病気になるか分からないし、介護が必要になったらお金もかかるでしょう」

 

そう説明すると、亮介さんは少し不満そうな顔をしました。

 

「でも全部使うわけじゃないだろう? 僕たちだって、今が一番お金のかかる時期なんだよ」

 

千鶴子さんは、息子の事情も理解していました。それでも、その場で援助を約束することはできませんでした。

次ページ「私にもこれからの暮らしがある」援助を断った母の本音

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