デフレ経済と言われた日本は、もはや過去の話となった。物価上昇の波は欧米諸国だけでなく、日本国内にも定着しつつある。日本の全国消費者物価指数(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は、足元で前年同月比2%前後で推移している。東京都などの大都市圏はもちろん、地方に暮らす人々の間でも物価高の実感が急速に広がってきた。仕入れコストの価格転嫁や人件費の上昇を背景に、モノやサービスの価格は今後も上昇を続ける可能性が高い。インフレの波は、都市部から地方へと確実に波及している。

インフレ実感トップ10の9割が「地方」

地方に住む人たちの物価高の実感を裏付けたのが、株式会社GA technologies(GAテクノロジーズ)が実施した「47都道府県別の投資意識と実態調査」(2025年8月25日~31日実施、全国の20~50代男女8,859人対象)だ。

 

調査によると、「1年前と比べて物価高を感じる」との回答が最も多かったのは山梨県で、84.7%に達した。続く2位は大分県(84.4%)、3位は徳島県(84.1%)となり、上位5県をすべて地方部が占めた。上位10位以内の9割が地方部であり、東京都や大阪府などの都市部よりも、地方在住者のほうが物価上昇を強く実感している割合が高い実態が浮き彫りとなった。なお、同調査では都市部を総務省統計局の区分に基づき「三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)」と定義している。

 

トップとなった山梨県の内訳を見ると、「物価が上がったと感じる項目」では「食料品」が67.1%と突出しており、「公共料金」(6.5%)や「住居」(3.2%)を大きく引き離している。毎日の生活に欠かせない食料品の値上がりが、地方の生活実感を直撃している格好だ。また、「家計が非常に厳しい」と答えた比率は栃木県(29.5%)が最も高く、次いで岩手県(27.6%)、大分県(26.3%)と、こちらも地方部が上位を占めている。

縮まる物価地域差と「実質賃金」の行方

地方でインフレの実感が強まっている背景には、都市と地方の「物価格差の縮小」も関係している。

 

総務省が公表した2025年の「消費者物価地域差指数」によると、物価水準の最大都道府県間倍率(最も高い都道府県÷最も低い都道府県)は1.08倍だった。これは2024年と同水準であるものの、2020年の1.10倍と比べると縮小傾向にある。全国一律での価格改定や物流コストの上昇などにより、かつて都市部に比べて割安感があった地方の物価水準が底上げされ、都市との差が縮まりつつあるのだ。

 

こうしたインフレ圧力を相殺し、家計の痛手を和らげるカギを握るのが「賃金」の動向だ。物価変動の影響を除いた実質賃金は、今年1月から8カ月連続で前年同月を上回っている。厚生労働省の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、8月の実質賃金は前年同月比で1.5%増加した。インフレが全国へと広がる中、都市部だけでなく地方においても実質賃金の上昇ペースを維持できるかどうかが、日本経済が持続的な好循環へと向かえるかの試金石となりそうだ。

 

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