社運を賭けたプロジェクトに抜擢も…5億円の損害を与えたエース社員
不動産開発会社で営業課長を務めているAさん(42歳)。年収は約1,200万円です。
そんなAさんは、社運を賭けた「駅前再開発・複合商業施設プロジェクト」の土地取得交渉の担当に抜擢されました。トップセールスとして社長からの信頼も厚く、現場の裁量をほぼ一任されていました。
長年にわたって地権者との交渉を重ね、ようやく手に入りかけた広大な土地。仮にプロジェクトが頓挫したら、すでに投じている莫大な設計費用や先行投資がすべて水の泡となる、まさに会社の未来を左右する重大な取引でした。
土地取得の契約直前、Aさんの部下から「隣地との境界線に問題があるかもしれないため、専門家を入れて調査すべき」という進言がありました。しかしAさんは、競合他社に土地を奪われることを焦り、これを確認せずに「問題なし」とするずさんな稟議書を作成。
社長は土地の境界確認や権利関係の最終調査が「一部未完了」となっている点に気づきましたが、Aさんのこれまでの実績を信じて特例で稟議を承認し、約5億円の決済を成立させてしまいました。
ところが工事開始直前になって、隣地の所有者から境界線トラブルによる工事差し止めの仮処分申請が申し立てられます。「やっちまった……。部下の言うことを聞いておけばよかった……」とAさんは絶望。
結果的にプロジェクトは長期間ストップし、違約金などで会社は約5億円の損害を被る事態となりました。
「部下の進言を無視して、虚偽報告で会社に約5億円の損害を与えた。Aさん本人と、身元保証人である父親に全額請求してやる」と社長は激怒しました。
果たして今回の事例のように、重大な過失によって会社に多大な損害を与えた従業員に対し、会社は本人や身元保証人に全額賠償を請求することは法的に可能なのでしょうか。
