(※写真はイメージです/PIXTA)

退職後、「元気なうちにやりたいことを楽しみたい」と考える人もいるでしょう。十分な貯蓄があれば、旅行や趣味にお金を使うことも老後の選択肢の一つです。ただし、まとまった資産があるほど、年間でいくら減っているのかを実感しにくいこともあります。長い老後では、「払える金額」と「使い続けられる金額」を分けて考える必要があります。

3年間で約1,200万円減少…初めて計算した「この先20年」

もちろん、1,200万円のすべてを旅行に使ったわけではありません。

 

毎月の生活費もかかります。マンションの管理費や修繕積立金、固定資産税、家電の買い替えなど、年金だけでは賄い切れない支出もありました。

 

旅行関連の支出を確認すると、3年間で約900万円。年平均では約300万円です。残りは日常生活で生じた年金収入を上回る支出や、臨時の出費などでした。

 

孝雄さんは初めて、年間単位で資産の減り方を考えました。

 

「そのときまで、『あと4,700万円もある』と思っていたんです。でも、この3年間と同じように毎年400万円ずつ減ったら、10年で4,000万円でしょう。もちろん毎年同じではないですけど、急に金額の見え方が変わりました」

 

総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯では、1ヵ月の実収入は13万1,456円、可処分所得は11万8,465円、消費支出は14万8,445円でした。平均では、消費支出が可処分所得を月約3万円上回っています。

 

さらに、物価も変化します。総務省『2025年平均 消費者物価指数』では、総合指数は前年比3.2%上昇しました。将来の物価が同じペースで上昇するとは限りませんが、現在想定している生活費がそのまま何十年も続くとは限りません。

 

孝雄さんは旅行をやめたわけではありません。見直したのは回数と使い方でした。

 

翌年に考えていた海外旅行4回のうち2回を翌々年以降に回し、国内の長期滞在も短くしました。飛行機も「長時間の便だけ上位クラスにする」と決めました。

 

年間の旅行予算には200万円という目安を設けています。

 

「旅行を我慢して5,000万円を残したいわけじゃないんです。残高が減るのが怖くて何もしなくなったら、それも違う。ただ、使えるから使う、では続かないと分かりました」

 

孝雄さんが後悔しているのは、旅行そのものではありません。もっと早い段階で、1回の旅行費ではなく「1年間でいくら使ったか」を確認しておけばよかったといいます。

 

「100万円なら払える、80万円なら払える、と毎回考えていたんです。でも、それを年に何回やるのかは考えていなかった。そこですね」

 

老後資金に「誰にでも十分といえる金額」はありません。年金額や住居費、健康状態、今後必要になる支出、何歳までを想定するかによって必要額は変わります。

 

まとまった貯蓄があっても、使い方を考えるときに重要なのは残高だけではありません。年間でいくら取り崩しているのか、そのペースを今後も続けられるのか。楽しむためのお金だからこそ、長い期間で確認しておくことが、やりたいことを続けるためにも必要でしょう。

 

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