「まだ働ける。辞める理由がない」67歳まで続けた週5日勤務
「60歳のときは、65歳くらいまで働けば十分だと思っていたんです。でも65歳になったら、まだ元気だし、もう少し働けるなと」
そう話すのは、67歳の隆一さん(仮名)です。65歳の妻・恵子さん(仮名)と2人で暮らしています。
隆一さんは大学卒業後、機械部品メーカーに勤務。営業職を中心に約40年間働き、60歳で定年を迎えました。
その後は再雇用制度を利用。仕事内容や待遇は変わりましたが、週5日、午前9時から午後5時まで勤務を続けていました。
65歳を迎えた際にも会社から声をかけられ、契約を更新。給与と年金を合わせれば家計には余裕がありました。
ただ、67歳になるころには、以前とは違う疲れを感じるようになります。
「仕事中は平気なんですよ。でも家に帰ると何もしたくなくなる。夕飯を食べたらテレビを見ながら寝てしまうことも増えました」
休日も、土曜日は疲れを取るだけで終わることが多くなりました。
妻から「どこか行かない?」と誘われても、「来週にしよう」と答える。夫婦で旅行へ行く場合も、連休に合わせなければなりません。
それでも隆一さんは、仕事を辞めようとは思いませんでした。職場から必要とされていることがうれしかったからです。
長く担当してきた取引先について若い社員から相談されることもあり、「自分にできることがまだある」と感じていました。
何より、体調を崩しているわけではありません。
「朝も普通に起きられるし、会社にも行ける。それなのに自分から辞めるのは、もったいない気がしたんです」
実際、65歳を過ぎても働く人は増えています。内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、2025年の就業率は65~69歳で54.5%、70~74歳でも36.2%。65歳以上の就業者数は22年連続で前年を上回っています。
隆一さんに転機が訪れたのは、長女一家が自宅へ遊びに来た日のことでした。
夕食後、隆一さんはソファで眠ってしまいました。目を覚ますと、長女から「最近、仕事忙しいの?」と聞かれました。
「別に忙しくないよ。昔に比べたら楽なもんだ」
そう答えると、長女は少し間を置いて言いました。
「じゃあ、お父さん、もう十分働いたんじゃない? 無理して続けなくてもいいと思うけど」
