欧州3週間、北海道1ヵ月…退職後に始めた長期旅行
「会社員のころは、お金より時間がなかったんです。行きたい場所はいくらでもありました」
そう話すのは、68歳の孝雄さん(仮名)です。
孝雄さんはメーカー勤務を経て、65歳で退職しました。妻とは50代で離婚し、子どもはすでに独立。現在は一人暮らしです。
退職時点の預貯金や金融資産は約5,900万円。住宅ローンを完済したマンションも所有しています。
公的年金は月約18万円です。
もともと旅行が好きだった孝雄さんは、退職後にやりたいことをノートに書き出していました。
ヨーロッパを鉄道で巡る。ニューヨークでミュージカルを見る。北海道に1ヵ月滞在する。
「若いころみたいに安さだけで選ぶ旅行はしたくなかったんです。飛行機も長距離ならプレミアムエコノミーやビジネスクラスにしたい。ホテルも駅から遠いところは避けようと思っていました」
最初の年は国内旅行を含めて7回ほど出かけました。
翌年には3週間のヨーロッパ旅行と東南アジアへの旅行。国内でも温泉地や北海道へ足を運びます。
一度の旅行に100万円以上使うこともありました。それでも孝雄さんに浪費しているという感覚はありません。
「5,900万円あれば、100万円使ってもまだ5,800万円でしょう。そういう考え方だったんですよ」
日常生活ではむしろ倹約していました。自炊をし、車は退職を機に手放しています。ブランド品にも興味はありません。
孝雄さんにとって、旅行だけが「お金を惜しまないもの」でした。
観光庁『旅行・観光消費動向調査 2025年年間値(確報)』によると、2025年の日本人国内旅行消費額は26兆7,845億円で、前年比6.5%増。宿泊旅行だけで21兆7,211億円に上りました。旅行には交通費、宿泊費、飲食費などさまざまな支出が伴います。
退職から3年目の終わり、孝雄さんは翌年の旅行を考えるため、久しぶりに資産状況を一覧にしました。
そこで手が止まります。退職時に約5,900万円あった金融資産は、約4,700万円になっていました。3年間で、およそ1,200万円減っています。
「4,000万円台になっている数字を見て、初めて『あれ?』と思ったんです」
