自分のための行動が「誰かのメリットになる」地域通貨
さらに一歩進めるなら、プレミアム付き商品券を雪ん子の仕組みで発行することができます。
プレミアム付き商品券は発行金額が大きいため、雪ん子という地域通貨のよいPRになります。店舗側としても商品券を使う人を取り込む施策が必要ですから、結果として雪ん子加盟店を増やすことにもつながると思います。
健康のためウォーキングイベントに参加したり、健康診断や健診を受診したりすることも、誰かの役に立つ「いいこと」です。自分の健康のための歩いているにもかかわらず、それが実は誰かのメリットになる仕組みが地域通貨の面白いところです。
ウォーキングのような本来は経済効果を生まない「非経済活動」まで拾い上げ、地域経済の活性化につなげることが地域通貨の役割といってもよいかもしれません。
では、この健康ウォーキングのケースでは誰が受益者となるのでしょうか。まずは体育館の例でも触れた通り、健康増進によって医療費負担が抑えられるという点で自治体が受益者となりえます。
ちなみに自治体の多くは、今後の高齢化社会において医療費・介護費の負担が増え、財政的に苦境に立たされると予見されています。健康寿命の延伸が全国の自治体に共通する喫緊の課題ですから、健康増進活動の支援は自治体の重要な施策になるでしょうし、そこで雪ん子が一役買うことができます。
しかし、それだけではありません。例えば、商店街やショッピングセンターをウォーキングのルートにすれば、通行客が増えて買い物による売上アップにつながる可能性があります。つまり、商店街の店舗やショッピングセンターも受益者になれるわけです。
何気ない行動を「経済活動」に転換できる
雪ん子の使い道としては、地元の加盟店舗で買い物に使うだけでなく、寄付するという選択肢もあります。「いいことして貯めた雪ん子を、いいことに使う」ことは、まさにコミュニティの醸成につながると思います。
誰かのために何かをしたいけど、その方法がなかなか思いつかないという人もいるはずです。ボランティアをしたいけれど時間の都合が合わない、未経験なのでハードルが高いと感じる人もいるでしょう。そういう人も、ウォーキングなら簡単にできるかもしれません。
自分の健康のためにウォーキングイベントに参加し、そこで発行された雪ん子を寄付するといった使い方ができるわけです。
自分を含め、誰かのためになる「いいこと」は、アイデア次第でさまざまな地域活性化に結びつけられます。日々、何気なく行われている「いいこと」を細かく、広範囲で拾い上げ、経済活動につなげていくことが地域通貨の特徴であり、魅力ともいえるのです。
また、地元を離れていても地元を応援できる「ふるさと納税」制度も普及が進んでいますが、ふるさと納税された金額の一部でも、確実に地元の活性化につながるように地域通貨の発行原資に充てることなどは、その流通量を増やすことになりますし、何よりも「地元のために」というふるさと納税の基本精神に則るものだと思います。