弁護士・司法書士と連携し、4段階で手続きを進める
今回の案件では、弁護士・司法書士と連携しながら、次の4つの段階で手続きを進めました。
ステップ1 戸籍を調査し、相続関係を確定する
まずは、明治から平成までの戸籍をたどり、旧地主側の相続関係を調査しました。長期間にわたって相続登記が行われていない不動産では、誰が権利を引き継いでいるのかを確認するだけでも、多くの調査が必要になります。
ステップ2 裁判所への申し立てと時効取得の判決
次に、相続財産を相手方として時効取得訴訟を提起しました。昭和62年1月1日を起算点として取得時効が成立していることを主張し、裁判所から確定判決を得ました。
ステップ3 代位による相続登記と所有権移転登記
判決を得ただけでは、そのままSさんたちの名義に変更できるわけではありません。まず、原告側から代位による相続登記を行い、時効取得による所有権移転登記ができる状態にしました。
そのうえで、確定判決に基づき、Sさんを含むきょうだい6人の名義へ所有権移転登記を行いました。
ステップ4 きょうだい5人からSさんへ持分を贈与
最後に、事前にきょうだいの間で話し合っていたとおり、他の5人が所有する持分をSさんへ贈与しました。これにより、土地の名義をSさん1人に集約することができました。
30年以上管理してきた土地が、ようやくSさんの単独名義に
弁護士による裁判手続きと、司法書士による登記手続きを連携して進めたことで、何十年もの間、権利関係を整理できずにいた土地について、ようやく解決することができました。
時効取得訴訟では、昭和62年1月1日を起算点とする20年間の時効成立が認められ、確定判決を得ました。
その後、原告側から代位による相続登記を行ったうえで、確定判決に基づき、まずSさんを含むきょうだい6人への所有権移転登記を行いました。
さらに、その直後、事前の計画どおり、他のきょうだい5人からSさんへ、それぞれの持分を贈与する所有権移転登記を申請しました。
こうして、長年にわたり固定資産税を代納し、実際に土地を管理し続けてきたSさんが、名実ともにこの土地の単独所有者となりました。
これで、将来はSさんの子どもたちへ、権利関係を整理した状態で土地を引き継ぐことができます。
「税金を払っているから自分の土地」にはならない
今回の事例のように、明治・大正・昭和から登記が放置され、さらに相手方の相続人もいない土地について、一般の方が自力で権利関係を整理することは容易ではありません。長年にわたって土地を使い、固定資産税を負担していたとしても、それだけで自然に登記名義が変わるわけではありません。
一方で、裁判によって時効取得が認められれば、それで終わりというわけでもありません。
今回、そのまま手続きを終えていれば、土地はきょうだい6人の共有名義となっていました。共有名義のまま年月が経ち、それぞれのきょうだいに相続が発生すれば、所有者がさらに増え、将来の売却や活用が難しくなってしまう可能性があります。
そこで重要なのは、目の前の問題を解決することだけでなく、「最終的に誰の名義にするのか」まで考えて手続きを組み立てることです。
今回も、裁判によって所有権を取得するところだけで終わらせず、最終的にはSさん1人の名義に集約することをゴールとして、きょうだい間の事前合意や判決後の贈与登記まで含めて手続きを設計しました。
複雑に絡み合った権利関係であっても、一つひとつ整理し、必要な専門家と連携しながら進めることで、次の世代へ安心して引き継げる状態にすることができます。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
