「来年行けるとは限らない」69歳で変わった旅行の考え方
「でも、孫たちと行きたかったでしょう?」
美代子さんが聞くと、和彦さんは否定しませんでした。
「行きたいよ。でも、孫が行けるようになるまで待っていたら、俺たちは何歳になるんだろう」
その言葉で、美代子さんも初めて「自分たちの年齢」を意識したといいます。
夫婦は現在69歳。健康上、大きな問題はありません。長時間歩くこともでき、飛行機に乗るのも苦になりません。
だからこそ、「旅行はいつでもできる」と思っていました。しかし、3年前には66歳だった2人も69歳です。
「3年なんてすぐでした。70歳になったから突然旅行できなくなるわけじゃないけれど、5年後、10年後も今と同じとは限らないですよね」
夫婦はその夏、2人分の航空券とホテルを予約しました。
孫に合わせた日程ではないため、混雑する時期を少し外すこともできます。3泊4日だった当初の計画も、夫婦の希望に合わせて5泊に変更。移動を詰め込みすぎず、以前から行きたかった場所をゆっくり回ることにしました。
美代子さん夫婦は、今後数年間の旅行に使う金額をあらかじめ決めることにしました。
「貯金が4,800万円あるから何でも使っていい、という話ではないんです。でも、旅行したくて貯めてきた部分もある。それなのに、ずっと『来年』と言っているのも違うかなって」
北海道から帰ったあと、孫たちに写真を見せると、「いいなあ。私も行きたかった」と言われました。美代子さんは、「じゃあ今度、予定が合ったら一緒に行こう」と答えたそうです。今度は、その日まで夫婦の旅行を止めて待つつもりはありません。
内閣府の同調査では、「趣味やレジャー(旅行等)」を優先的にお金を使いたい項目として挙げる割合は、年齢が高くなるほど低くなる傾向も示されています。
子どもや孫との旅行は、家族で過ごす貴重な機会になります。一方、家族全員の生活や予定が変われば、いつでも同じように時間を合わせられるとは限りません。
「いつか一緒に」と考えることと、その日まで自分たちの予定を止めておくことは別です。健康や家計の状況を確認しながら、今できることに時間やお金を使うことも、高齢期の生活設計では一つの選択肢になるでしょう。
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