(※写真はイメージです/PIXTA)

年齢を重ねてからの住まいでは、家賃の負担だけでなく、「この先も住み続けられるか」という問題もあります。持ち家がなければ、民間賃貸で暮らし続ける選択肢もありますが、収入が年金中心になるなか、住居費や将来の住み替えに不安を抱く人もいるでしょう。

「70代でまた家を探すの?」妻が気にしていた次の更新

「更新のお知らせ、来てたよ」

 

由美子さん(仮名・68歳)が封筒をテーブルに置くと、夫の正志さん(仮名・68歳)は「もうそんな時期か」とため息をつきました。

 

夫婦は20年以上、東京都内の民間賃貸マンションで暮らしてきました。

 

子どもは独立しています。正志さんが退職した現在、夫婦の年金は月約22万円です。

 

住んでいたのは2LDKで、家賃と管理費を合わせると月約9万円。長く住んでいるため部屋には愛着があり、スーパーや駅にも困りません。

 

それでも、退職してから由美子さんには気になることがありました。

 

「今はここに住めているけど、もし出ることになったら、70代でまた部屋を探すの?」

 

今回の更新ですぐ退去する必要があったわけではありません。

 

ただ、年金月22万円のうち約9万円が毎月住居費として出ていきます。設備も古くなり、以前には給湯器の故障で不便な思いをしたこともありました。

 

何より夫婦には、「ここを出たあとの住まい」がありません。

 

正志さんは当初、「まだ元気なんだから、そんな先のことまで考えなくても」と話していました。ところが由美子さんから「5年後は73歳だよ」と言われ、考えが変わったといいます。

 

「今なら自分たちで探して、見に行って、引っ越しもできる。でも、10年後に同じことができるかは分からないなと思ったんです」

 

内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、現在の住居の問題点として「家賃、税金、住宅維持費など住宅に関する経済的負担が重い」を挙げた人は15.5%。また、「住まいが古くなり、いたんでいる」は29.5%、「段差や階段等があり使いにくい」は12.7%となっています。

 

そんなとき、由美子さんが調べ始めたのが都営住宅でした。

 

都営住宅は誰でも希望すれば入居できるわけではありません。所得などの入居資格があり、募集方式も住宅や募集時期によって異なります。2026年現在、世帯向の一般募集には定期募集のほか随時募集などがあり、所得が基準以下であることも条件です。公的年金についても、年金の受取額そのものではなく、所定の方法で「都営住宅の所得金額」に換算して判定されます。

 

夫婦は自分たちが対象となる募集を確認して申し込み、入居の機会を得ました。

 

案内されたのは、築年数こそ経っているものの、エレベーターのある団地の2DK。駅からは少し離れていますが、スーパーと診療所は徒歩圏内でした。

 

「新しくてきれいなマンションではなかったです。でも、ここなら生活できそうだね、と2人で話しました」

 

長年暮らしたマンションを離れ、夫婦は68歳で都営団地へ移りました。

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