月8万円から5万円へ…それでも週3日働き続ける理由
70歳を過ぎてから、正一さんは勤務を週5日から週3日に減らしました。収入は月5万円ほどになりましたが、本人にはそれくらいがちょうどよかったといいます。
月曜日、水曜日、金曜日は仕事。残りの日は買い物や通院、釣りなどに使います。
「週5日のころは、『明日も仕事か』と思うことがありました。でも週3日なら、仕事の日が生活の区切りになるんです」
収入が減ったことで、家計にも変化はありました。
年金月14万円だけで、固定資産税や家電の買い替えといった臨時支出まで含めてすべてをまかなうのは簡単ではありません。
一方、毎月5万円程度の給与があれば、日常の支出を補いながら、貯蓄1,800万円を急いで取り崩さずに済みます。
「貯金があるんだから使えばいい、と子どもには言われます。でも、働けるうちは月5万円でも入ってくると安心なんですよ。そのお金で釣り道具を買ったり、友達と飲みに行ったりするのは気楽です」
正一さんにとって、仕事を続ける理由は「お金ではない」と言い切れるものでも、「生活費のためだけ」と言えるものでもありません。
収入がある安心感と、朝起きる理由があること。その両方がありました。
総務省の統計によると、2024年時点で65歳以上の就業者は930万人で過去最多となり、65~69歳の就業率は53.6%、70~74歳でも35.1%。年齢を重ねても働く人は一定数います。
一方、高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保措置は事業主の義務ですが、70歳までの就業機会確保は努力義務です。72歳の正一さんのように、70歳を超えて同じように働き続けられることが制度上すべての人に保証されているわけではありません。
正一さん自身も、「いつまで続ける」とは決めていません。
最近は、以前より重い物を運ぶ作業を負担に感じる日もあります。体調に変化があれば、仕事を辞めるつもりです。
「80歳まで絶対に働く、とは思っていません。来年もできそうならやる。それくらいでいいんじゃないですか」
高齢期の就労では、生活費をいくら補う必要があるかだけでなく、体力や勤務日数、自由に使える時間とのバランスも重要になります。一定の貯蓄があっても働くこと、反対に収入が減っても勤務日数を減らすこと。そのどちらにも一律の正解があるわけではありません。
現役時代のように「何歳まで働くか」だけを決めるのではなく、年齢や家計の変化に合わせて「どのくらい働くか」を調整することも、高齢期の仕事との付き合い方の一つといえるでしょう。
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