「使う部屋」だけに…引っ越して変わった暮らし
問題は、4LDKにあった荷物を2LDKへどう収めるかでした。夫婦は子どもたちに連絡し、「自分のものは必要なら持っていって」と伝えます。
すると長男から返ってきたのは、「ほとんどいらないよ」という答えでした。長女も、アルバムなど一部を除いて処分して構わないといいます。
「ずっと『子どものものだから』と思って残していたんです。でも本人たちは、とっくに自分の家で生活していたんですよね」
家具も見直しました。6人掛けのダイニングテーブル、大きな食器棚、来客用の布団。新居で使うものだけを決め、それ以外は処分しました。
引っ越し後、恵子さんが最初に感じたのは、掃除の早さだったそうです。
「午前中いっぱいかかると思って始めたら、すぐ終わっちゃって。『もう終わり?』って夫に聞きました」
正志さんにも変化がありました。
以前は車で出かけることが多かったものの、新居ではスーパーや飲食店へ歩いて行けます。駅も近いため、夫婦が別々に出かける機会も増えました。
内閣府の同調査では、住まいや地域で重視することとして「医療や介護サービスなどが受けやすいこと」が61.4%、「駅や商店街が近く、移動や買い物が便利にできること」が54.1%となっています。住み替えでは、住宅そのものだけでなく周辺環境も重要な条件になります。
もちろん、一戸建てからマンションへ移れば、すべての負担がなくなるわけではありません。管理費や修繕積立金、固定資産税なども必要です。
それでも夫婦は、4LDKを手放したことを後悔していません。家族4人だったころには必要だった4LDKも、夫婦2人になった現在の生活には合わなくなっていたのです。
高齢期の住まいを考える際、老朽化や段差だけが住み替えの理由になるわけではありません。内閣府の同調査では、「住まいが古くなり、いたんでいる」と感じる人が29.5%いる一方、「住宅が広すぎる」「部屋数が多すぎる」という回答もあります。
かつて必要だった広さが、現在も必要とは限りません。家族構成や日々の過ごし方が変わったとき、今ある家に暮らしを合わせ続けるのではなく、現在の暮らしに合う住まいを考えることも、高齢期の住居選びの一つといえるでしょう。
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