「家賃だけじゃなかった」引っ越して初めて分かった安心感
引っ越し後、生活は少し変わりました。
2LDKから2DKになったため、家具を減らす必要があります。大きな食器棚を処分し、子どもが泊まりに来たときのために残していた布団も整理しました。
「最初は狭くなったと思いました。でも、2人ならこれで十分なんですよね」
一方、買い物は歩いて済ませられ、通院にも大きな不便はありません。
内閣府の同調査では、高齢者が住まいや地域について重視する条件として、「医療や介護サービスなどが受けやすいこと」が61.4%、「駅や商店街が近く、移動や買い物が便利にできること」が54.1%に上ります。実際、外出目的では「近所のスーパーや商店での買い物」が80.4%、「通院」が69.9%を占めています。
夫婦が感じた変化は、毎月の住居費だけではありませんでした。ある晩、由美子さんが部屋を見回して言いました。
「もう次の家を探さなくていいんだね」
以前は契約更新のたび、「このまま住むのか」「次はどうするのか」という話が出ていました。都営住宅でも収入状況などに応じて使用料が決まり、入居後にも守るべきルールがあります。一定期間入居した後に収入基準を超えれば、収入超過者として扱われる制度もあるため、「一度入れば無条件で一生同じ条件」というわけではありません。
それでも、夫婦にとっては、高齢期の住まいを自分たちで考え、条件に合う選択肢を確保できたことが大きかったといいます。
「家賃が安ければどこでもいいと思っていたわけでもない。買い物に行けて、病院にも行けて、この先も2人で暮らせる場所を探した結果がここでした」
厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』では、65歳以上の人がいる世帯のうち「夫婦のみの世帯」は31.8%。また、65歳以上の人だけで構成される世帯は62.3%を占めています。
高齢期の住まいに求める条件は、世帯の収入や資産、健康状態、家族との距離などによって異なります。公営住宅も、所得などの入居資格を満たしたうえで申し込む選択肢の一つです。
住居費をいくらに抑えるかだけでなく、買い物や通院を続けられるか、数年後に再び住まいを探す負担をどう考えるか。年齢を重ねてからの住み替えでは、現在の暮らしだけでなく、その先まで含めて住まいを選ぶことが重要になります。
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