「6,500万円あるなら大丈夫」退職後に始めた海外生活
「一度くらい、海外で暮らしてみたかったんです」
そう話すのは、2年前から東南アジアの都市で暮らす雅彦さん(仮名・68歳)です。
大学卒業後は会社員として働き、65歳で退職。離婚歴があり、子どもはすでに独立しています。
退職時点の金融資産は約6,500万円。現在は月約17万円の年金を受け取っています。
現役時代から海外旅行が好きだった雅彦さんは、退職後しばらく日本で暮らしたものの、「元気なうちにやってみよう」と海外生活を決断しました。
日本の住まいは賃貸だったため、引き払って渡航。最初に借りたのは、中心部にある家具付きのコンドミニアムです。プールやジムがあり、飲食店にも歩いて行けます。
「日本で同じようなマンションに住んだら高いだろうし、せっかく海外に来たんだから、少しくらいぜいたくしてもいいだろうと思っていました」
家賃は日本円換算で月約15万円。さらに光熱費や通信費、食費、交通費などがかかります。
外食も増えました。
当初は現地の安価な食堂を利用していましたが、次第に日本食や洋食の店にも通うように。日本から知人が遊びに来れば、一緒に観光へ出かけます。
それでも雅彦さんは、あまり気にしていませんでした。
「6,500万円あるから、月10万円くらい赤字でも大丈夫だろうって。年間120万円でしょう。単純計算なら何十年もあると思っていたんです」
ところが、通帳の残高は想像していたより速く減っていきました。
年に2回ほど日本へ帰れば、航空券に加えてホテル代や国内での移動費がかかります。現地でも旅行へ出かけ、家具や家電を買い足すこともありました。
月々の生活費とは別に、数十万円単位の支出が何度も発生していたのです。
日本で暮らす高齢者の家計を見ても、年金などの収入だけで支出をまかなえているとは限りません。総務省『令和6年全国家計構造調査』では、65~74歳の高齢単身無職世帯の可処分所得は月14万1,629円、消費支出は17万1,924円でした。平均では約3万円の差があります。
雅彦さんの場合、その差はさらに大きなものでした。
