(3)被疑者が被害者の連絡先(携帯電話番号など)をすでに知っている場合でも、警察や検察を介して連絡を取るべきか。
原則として、被疑者本人から直接連絡することは避けた方が安全です。
特に脅迫、威力業務妨害のような事件では、被疑者から被害者への連絡そのものが、「再び脅されるのではないか」「口止めされるのではないか」などと受け取られる可能性があります。場合によっては、捜査機関から証拠隠滅や被害者への働きかけを疑われる原因にもなり得ます。
被疑者がもともと電話番号やLINEなどを知っていたとしても、それと「刑事事件になった後に直接連絡してよいか」は別問題です。刑事訴訟法にも、被害者等の安全や社会生活の平穏を守るため、被害者を特定する情報の取扱いを制限する制度が設けられています。
したがって、示談交渉を希望するのであれば、弁護士を介して行うのが最も安全です。 弁護士から警察官や検察官に連絡し、「被害者に示談の意向があるか確認してほしい」「弁護人への連絡先開示について被害者の意向を確認してほしい」と依頼し、その上で交渉を開始する方法が一般的です。
すでに連絡先を知っている場合でも、まず弁護士に相談し、直接連絡して問題がないケースなのかを確認することをおすすめします。
(4)資力50万円未満で被疑者国選弁護人が選任され、正式裁判になった場合、弁護士費用の支払い義務は生じるか。
国選弁護人が選任された場合、私選弁護人のように、被疑者・被告人が弁護士に対して直接着手金や報酬金を支払う必要はありません。
国選弁護人の報酬や費用は、国が負担する仕組みになっています。そのため、被疑者国選弁護人が選任され、その後起訴されて正式裁判になったからといって、弁護士から直接「着手金」や「成功報酬」などを請求されるわけではありません。
ただし、正式裁判で有罪判決を受けた場合には、裁判所から「訴訟費用」の全部または一部を負担するよう命じられることがあります。 この訴訟費用には、国選弁護人に支給された報酬や旅費などが含まれることがあります。
もっとも、刑事訴訟法181条では、被告人が貧困のため訴訟費用を納付できないことが明らかな場合には、訴訟費用を負担させないことができるとされています。
そのため、「国選弁護人だから必ず完全に無料」というわけではありませんが、正式裁判になったからといって、当然に弁護士費用の全額を支払わなければならないわけでもありません。
なお、「資力50万円未満」という基準は、国選弁護人の利用に関する手続上の基準の一つです。実際に裁判終了後に訴訟費用を負担するかどうかとは別の問題になります。
したがって、国選弁護人が選任された場合には、弁護士へ直接費用を支払うのではなく、裁判の結果等によっては、裁判所から訴訟費用の負担を命じられる可能性があると理解しておくとよいでしょう。

