生活費、住宅、介護…70歳で始めた“老後資金の仕分け”
ある休日、和夫さんはノートを出し、「一回、分けて考えてみよう」と恵子さんに提案しました。まず確認したのは、毎月の生活です。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の可処分所得は月22万1,544円、消費支出は26万3,979円。平均では消費支出が可処分所得を月4万2,434円上回っています。
和夫さん夫婦も、年金月22万円だけで今後のすべての支出をまかなえるとは考えませんでした。
そこで3,500万円を漠然と「老後資金」と見るのをやめ、日常生活の不足を補うお金、住宅に使うお金、将来の医療や介護などに備えるお金に分けて考えることにしました。
その結果、自宅についても方針が変わります。
業者から提案された工事をすべて一度に行うのではなく、まず必要性の高い箇所を確認し、優先順位をつけることにしました。一方で、浴室には手すりを付けるなど、今後の暮らしやすさにつながる部分にはお金を使います。
「最初は『できるだけ貯金を減らさないように』と考えていたんです。でも、それだと家も直せない。反対に『3,500万円あるから大丈夫』で全部直すのも怖い。何のためのお金なのかを分けないと決められなかったんですよね」
内閣府の同調査では、現在の貯蓄について「十分だと思う」と回答した人は5.9%、「最低限はあると思う」は30.8%でした。一方、「少し足りない」「かなり足りない」は合わせて57.1%に上ります。
もちろん、必要な老後資金は世帯ごとに異なります。3,500万円あれば十分とも、不足するとも一律には判断できません。
和夫さん夫婦も、介護のために具体的にいくら必要になるのか、答えが出たわけではありません。それでも、以前とは一つだけ違います。
「老後のために貯める」という段階は、もう終わっていることに気づいたのです。
「現役のころは、とにかく残高を増やせば安心でした。でも今は、そのお金を使って暮らしていくターンなんですよね」
老後のために用意した3,500万円を、老後になってどう配分するのか。夫婦は70歳になって初めて、「貯めたあとの計画」を立て始めました。
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