68歳祖母が気づいた自分の“期待”
夏休みになっても、美咲さんから特別な連絡はありませんでした。SNSを見ると、大学の友人たちと出かけたり、アルバイトをしたり、忙しく過ごしているようです。
「大学はどう?って私から連絡しようかなと思ったんです。でも、何だか催促しているみたいな気がして」
何を催促するのか。
お礼はすでに言ってもらっています。娘からも孫からも十分に感謝されました。50万円を返してほしいわけでも、何かを買ってほしいわけでもありません。
それでも心のどこかで、援助をきっかけに孫から連絡が増えたり、大学生活の話を聞かせてもらえたりすることを期待していたのではないか――。
そう気づいたのは、秋を前に理恵さんと電話で話したときでした。
「美咲、元気にしてる?」
「元気だよ。最近はバイトばっかり。家にもあんまりいないよ」
ごく普通の会話でした。千恵子さんは電話を切ったあと、春に自分が送った「無事に振り込んだよ」というメッセージを久しぶりに見返しました。
「別に、あの子が悪いわけじゃないんですよ。ちゃんとありがとうって言ってくれたんだから。それなのに私は、お金を出したことで、前より近くなれるような気がしていたんでしょうね」
年金月14万円で暮らす千恵子さんにとって、50万円は決して小さな金額ではありません。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』では、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得は月11万8,465円、消費支出は14万8,445円でした。平均では消費支出が可処分所得を上回っており、貯蓄の取り崩しなどで補う家計もあります。
千恵子さんは、今回の50万円を後悔しているわけではありません。ただ、今後は孫の進学や就職、結婚などのたびに「できるだけ多く出してあげよう」と考えるのではなく、そのときの自分の生活や資産を確認して金額を決めるつもりです。
美咲さんとの関係も変わっていません。先日、久しぶりに「今度おばあちゃんの家に行っていい?」とメッセージが届きました。
「もちろん、と返しました。大学の話を聞けるのは楽しみです。でも、それと50万円は別の話だったんですよね」
子や孫への援助は、喜ばれることも多いでしょう。一方で、援助する側がその先に何を期待しているのかは、お金を出す前には自分でも気づきにくいことがあります。
千恵子さんにとって今回の50万円は、孫の大学進学を支えると同時に、自分がこれから家族のためにどこまでお金を使うのかを考えるきっかけにもなりました。
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