父親に「お金は自分で使ってください」と伝えたが…
智則さんには、5年前に亡くなった母に関する複雑な思いもあるといいます。
母は生前、「富良野でラベンダー畑を見たい」「海外にも行ってみたい」と話していました。しかし父は「旅行に何十万円も使うなんて」「近場で十分」と乗り気ではなく、結局、実現しないまま母は亡くなりました。
「父はずっとそうなんです。お金はあるのに、なんやかんや言い訳をしてお金を使わない」
父にとってお金を使わないことは、家族を守るための備えなのかもしれません。けれど智則さんにとっては、父が自分たちを理由に我慢を続けることが、愛情には思えなくなっていたのです。
「お金を残そうとしなくていいから。ぜんぶ自分のために使って。家や設備も修理して、美味しいもの食べてさ。まだ元気なんだから」
1年ほど前、思い切ってはっきり伝えました。相続をアテにしている様子を少しでも見せれば、きっと父は「ほら、そうだろう」とお金を使わないままだと思ったからです。
しかし、父の返事は期待を裏切るものでした。
「お前に残すと言っているのに、何が不満なんだ。俺の我慢は愛情だぞ。無駄にするんじゃない」
――あまりの噛み合わなさに、智則さんは疲れてしまったといいます。
「もう話したくないなと思ってしまって。古いままの家で設備を直すことなく、お金を使わないで父は人生を終えるのかもしれません。そうなったら、父は満足かもしれませんが、僕はすごく罪悪感を感じる。それをわかってくれないんです……」
