「孫が遊びに来るの」楽しそうに予定を話す住人たち
「シルバーウィークは、娘のところに3泊するの」
9月に入ったある日、マンションのラウンジで顔なじみの女性からそう聞いた久美子さん(仮名・78歳)は、「いいですね。お孫さんにも会えるんでしょう?」と笑顔で返しました。
久美子さんは8年前に夫を亡くし、3年前から一人でシニア向け分譲マンションに暮らしています。年金収入は月約19万円。以前住んでいた一戸建てを売却した資金などもあり、生活費に大きな不安はありません。
長女は50歳で、夫と大学生の娘との3人暮らし。車で1時間ほどの場所に住んでいます。
75歳で住み替えを決めた理由の一つは、一人暮らしへの不安でした。
夫と暮らしていた一戸建ては庭の手入れが必要で、2階へ上がる機会も次第に減っていました。夜に体調を崩したときのことも気になり、子どもたちと相談して現在のマンションを購入しました。
フロントにはスタッフがおり、緊急時の通報設備もあります。共用ラウンジでは、体操や映画鑑賞など入居者向けの催しも開かれています。
住み始めてからは顔見知りも増えました。
朝、エントランスで会えば「今日は暑いわね」と言葉を交わし、ラウンジで30分ほど話す日もあります。同年代の女性2人とは、ときどき近所の喫茶店へ出かける仲になりました。
「一人暮らしですけど、ここに来てからは誰とも話さない日のほうが少なくなりました」
そんな久美子さんが少し気になっているのが、間もなくやってくるシルバーウィークです。9月に入ると、マンション内でも連休の予定が話題に上るようになりました。
「息子夫婦と温泉に行くの」
「孫が遊びに来るから、今から楽しみ」
そんな話を耳にする機会が増えています。
先日もエレベーターで一緒になった住人から、「久美子さんは連休、どうするの?」と聞かれました。
「私は特に何も。娘にも予定がありますから」
そう答えたあと、久美子さんは少し間を置きました。
「みんな帰省するんですよね……」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、60歳以上で普段「毎日」人と話をする人は72.5%でした。一方、「1週間に1回未満・ほとんど話をしない」という人も6.0%います。高齢期にどの程度、人との接点を持っているかには個人差があります。
久美子さんが連休中のマンションを気にするのには、理由がありました。
