2026年7月「副首都法」成立
2026年7月、国会で「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律」が成立した。いわゆる副首都法の成立である。
大規模災害時に東京の首都中枢機能を代替する「副首都」を整備するとともに、人口や企業、行政機能を分散させ、「多極分散型経済圏」の形成につなげることを狙う法律だ。
法律には、国の機関の拠点整備だけでなく、交通施設や都市基盤の整備、規制緩和、民間投資を促す税制措置まで盛り込まれた。副首都が単なる災害時の避難先ではなく、平時から経済活動の中核を担うことも想定されている。
となれば、不動産市場の関心は当然、「どの都市が選ばれ、どこの地価が上がるのか」に向かう。
だが、首都政策を長く研究してきた明治大学名誉教授の市川宏雄氏は、「首都機能というのは、どこでも代替できるので場所ではない」といい、この議論について冷ややかに見ている。
市川氏によれば、東京で非常事態が生じても、首都圏の広域的課題に対応するために九都県市首脳会議も設置しており、その中で必要な機能を受けることはできるとする。
そもそも「首都機能とは何か」自体が曖昧であり、一つの都市に物理的な「副首都」をつくる発想そのものを疑問視する。大阪だけでなく、名古屋、福岡、札幌など複数都市が候補に名乗りを挙げるとも指摘する。
最も有力視される大阪に注目が集まる
では、副首都法は不動産市場に何ももたらさないのか。
そう言い切るのもまた早い。ポイントは「副首都」という肩書ではなく、国の機関、企業、人、交通・通信インフラという実体が、本当に移動するかどうかにある。
4都市の中で最も直接的な影響を受けそうなのが大阪だ。大阪府・大阪市は法律成立前から副首都化を進め、2026年2月には「大阪の副首都構想」を取りまとめた。国の動きを待って突然名乗りを上げたわけではなく、既存の都市戦略と今回の法律が接続しやすい。
不動産市場への影響が最も表れやすいのはオフィスだろう。仮に国の行政機関や政府系機関のバックアップ拠点が大阪に置かれれば、それに伴って企業も第二本社や災害対策拠点を設ける可能性が出てくる。金融、IT、コンサルティング、士業など周辺産業の需要も発生する。
ただし恩恵は大阪府全域に均等には広がらない。有力なのは梅田、中之島、淀屋橋、本町などだ。交通利便性だけでなく、非常用電源、複数の通信回線、高い耐震性能を備えた大型オフィスが集積する地区ほど、「国家機能を止めない街」としての価値が高まる。
住宅も同様だ。第二本社や行政拠点によって専門職・管理職が増えれば、北区や中央区の都心マンションだけでなく、吹田、豊中など職住近接性と住環境を兼ね備えたエリアへ需要が広がる可能性がある。

