「あと500万円貯まったら」何度も先送りした夫婦の楽しみ
「昔は、貯金が増えるたびに安心していました。でも今思うと、貯めること自体が目的になっていたんです」
そう振り返るのは、里枝子さん(仮名・74歳)です。73歳の夫・和夫さん(仮名)と、住宅ローンを完済した戸建てで暮らしています。
夫婦の年金収入は月約26万円。現在の預貯金は約4,000万円あります。
和夫さんは会社員、里枝子さんは子育てが落ち着いてからパートで働いてきました。もともと派手にお金を使う家庭ではありません。
教育費がかかっていたころは、「子どもが独立したら旅行しよう」が夫婦の口癖でした。
子ども2人が独立すると、今度は老後が気になります。
「あと500万円くらい増えたら安心だね」
夫婦は外食を減らし、車も長く乗りました。エアコンが古くなっても、壊れるまでは使おうと交換を延ばしました。
楽しみにしていた旅行も同じです。
60代半ば、里枝子さんは友人夫婦がヨーロッパを旅行した話を聞き、和夫さんに「私たちも行かない?」と持ちかけました。
和夫さんは興味を示しながらも、「海外は高いから、もう少し貯まってからでいいんじゃないか」と答えました。
数年後には北海道への長期旅行を考えました。
ところが今度は里枝子さん自身が「今年行かなくてもいいよね。旅行代を取っておこう」と言いました。
退職金が入り、住宅ローンも終わっていました。それでも夫婦の生活はほとんど変わりませんでした。
「2人とも、使わないことに慣れてしまったんです」
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1ヵ月の可処分所得は平均22万1,544円、消費支出は26万3,979円でした。平均では消費支出が可処分所得を4万2,435円ほど上回っており、貯蓄などを取り崩しながら生活する世帯もあることがうかがえます。
里枝子さん夫婦も「年金だけでは足りなくなるかもしれない」という不安が頭から離れませんでした。その結果、貯蓄は4,000万円まで増えていきました。
