離婚後に必要な「家計簿」
相談を受けた筆者がAさんに伝えたのは、「母親の離婚そのもの」と「離婚後の生活をAさんが支えること」はわけて考える必要がある、という点です。離婚するかどうかは夫婦それぞれの人生の選択であり、経済的な理由だけで望まない婚姻生活を続けなければならないわけではないでしょう。
一方で、離婚後の生活が成り立つかどうかは別問題です。特に長期間、配偶者の収入を中心に生活してきた人は、離婚前に「離婚後の住居」「保有する預貯金や財産」「毎月必要な生活費」「将来受け取れる年金」「就労による収入」「医療・介護に備える資金」などを具体的に確認しておく必要があります。
筆者からAさんには、まず母親本人にこれらを整理してもらい、不足があるなら、その不足額を誰がどのように補うのかまで話し合うよう勧めました。
年金分割についても、2026年4月1日以後に離婚等をした場合、請求期限は原則として離婚等をした日の翌日から5年以内です。制度があるからと安心するのではなく、自分がどの制度の対象になるのか、分割後の年金見込額がどうなるのかまで確認しておくことが重要です。
子の支援を前提にしない
親子には、民法上、一定の扶養義務が定められています。一方で、それは「親が望めば子どもが同居しなければならない」「子どもが親の生活費を負担しなければならない」という意味ではありません。具体的な扶養の内容や程度は、それぞれの収入や資産、生活状況などの事情によって異なります。
だからこそ、離婚後の生活設計を考える際に、「独身の子どもだから住ませてもらえるだろう」「困ったら子どもが生活費を出してくれるだろう」といった期待を、本人の同意なく資金計画に組み込むことは避けるべきでしょう。
もちろん、本人同士が納得したうえで親子が同居したり、子どもが経済的に支援したりすることに問題はありません。重要なのは、その支援を「当然」と考えないことです。
Aさんは、面談で整理した内容を踏まえ、母親にこう伝えたといいます。
「手続きや部屋探しなら手伝う。でも、お母さんの第二の人生を、私の人生の上にそのまま乗せるのは違うと思う」
筆者からAさんには、支援するとしても「同居する」「生活費を全面的に負担する」の二択で考える必要はないと伝えました。年金見込額の確認を手伝う、無理のない家賃の住まいを一緒に探す、行政の相談窓口につなぐなど、Aさん自身の生活を守りながらできる支援も存在するのです。
家族だからこそ助けられることはあります。しかし、離婚後の家計を「誰かがなんとかしてくれる」前提で組むのは危険です。本人の生活を数字で確認したうえで、家族がどこまで関わるのかを事前に話し合うことが、親にとっても子どもにとっても大切なのではないでしょうか。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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