離婚したら、夫の年金の1/2をもらえる?
数日後、Aさんは「母の生活まで、私が背負わないといけないのでしょうか」と、筆者のもとを訪れました。
話を聞いてみると、Aさんがもっとも不安に感じていたのは、母親の離婚後の生活設計がほとんど見えないことでした。そこで、母親の預貯金や財産分与、年金、今後の住居費など、確認すべき項目を一つずつ整理していくことに。
Aさんが母親から聞いていた範囲で状況を整理すると、母親には預貯金と財産分与によって一定の資産がある一方、毎月いくら使えるのか、今後の年金がいくらになるのか、何歳まで資産が持つのかといった計算はしていないことがわかりました。
さらにAさんが気になっていたのが、母親が口にしていた「年金分割したら、お父さんの年金を半分くらいもらえるんでしょ?」という言葉です。
「母はそういうんです。でも、本当にそんな制度なんでしょうか」
Aさんの質問に対し、筆者はまず年金分割の仕組みから説明しました。「年金分割」は、元配偶者が受け取る年金そのものを単純に1/2ずつわける制度ではありません。分割の対象となるのは、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)です。
合意分割では、当事者の合意または裁判手続きによって按分割合を定めます。また、2008年4月1日以後の第3号被保険者期間については、一定の要件を満たせば「3号分割」の対象となり、この部分は1/2ずつ分割されます。
したがって、「夫が月20万円の年金を受け取っているから、離婚すれば妻がその半分の10万円を受け取れる」といった単純な仕組みではありません。
そのうえで筆者は、母親自身の年金見込額を確認し、住居費や食費、水道光熱費、医療費、税・社会保険料などを含めた毎月の生活費を出す必要があると伝えました。64歳という年齢を考えても、「財産分与でもらったお金があるから大丈夫」だけでは、その資産が何年持つのか判断できません。
「お母さまが毎月いくらで暮らせるのかを出さないと、Aさんがどこまで支援するかも決められません」
そう伝えると、Aさんは「まず母自身に、年金や毎月の生活費を確認してもらいます」と答えました。
母の離婚の「前提」
FPとの面談後、Aさんは母親と改めて話し合いました。
「親が困っているんだから、娘が少しくらい助けてくれてもいいじゃない」
母親はそう主張します。しかしAさんにも生活があります。家賃や生活費を支払いながら、自分自身の将来に向けた貯蓄も続けています。なによりAさんが納得できなかったのは、「一緒に住んでもいい?」という相談すらなく、母親が当然のように転がり込んできたこと。Aさんは母親に伝えました。
「お母さんが離婚することに反対してるんじゃない。でも、お母さんが自由になるために離婚して、その生活を私が全面的に支えることになったら、それって私がお母さんの代わりに不自由になるってことでしょ」
母親は黙り込みます。そしてAさんは、ずっと引っかかっていたことを尋ねました。
「最初から、私が面倒を見る前提で離婚したの?」
母親は「そんなつもりじゃない」と否定しました。しかし、「あなたは結婚してないし、1人なんだから」という言葉を何度も口にします。
Aさんはそこで、母親との認識が根本的に違うことに気づきます。母親にとって、独身の娘の家には「余裕」がある。しかしAさんにとって、一人で暮らしている家は「余っている家」ではありません。自分のお金で家賃を払い、自分のためにつくった生活です。
Aさんは最終的に、「部屋を探すまでは手伝う。でも、ここで一緒に暮らすことはできない」と、はっきり伝えました。
