高齢者世帯が「赤字」だからといって、親も赤字とは限らない
高齢者の生活について、「年金だけでは足りない」という話を耳にする機会は少なくありません。総務省統計局の「家計調査(2025年)」でも、65歳以上の単身無職世帯は、可処分所得11万8,465円に対して消費支出14万8,445円となっています。単純に差し引けば、毎月約3万円の不足です。
確かに、子どもからの援助が大きな助けになる家庭もあるでしょう。しかし重要なのは、「高齢者世帯の平均が赤字」ということと、「自分の親の家計も赤字」ということは、まったく別の話だということです。
・持ち家なのか賃貸なのか
・年金はいくら受け取っているのか
・預貯金はいくらあるのか
・毎月の生活費はいくらなのか
・医療/介護など、今後予想される大きな支出はあるのか
これらによって必要な援助額は大きく変わります。だからこそFPとしては、親への仕送りを考えるのであれば、まず「毎月いくら渡せるか」ではなく、「毎月いくら不足しているのか」を確認することをお勧めします。
不足額が2万円なら2万円。普段は収支が均衡しているものの、家の修繕や医療費など大きな支出だけが心配なのであれば、毎月仕送りをするのではなく、必要になったときに援助する方法もあります。
親への仕送りで、自分の老後を削っていないか
もう一つ、忘れてはいけないことがあります。それは、仕送りする側にも人生があるということです。
Aさんは47歳。娘の教育費がこれから本格的にかかり、住宅ローンもまだ残っています。自身の老後資金も準備していかなければならない時期です。そのようななか、月5万円の仕送りは年間60万円。10年間続けば600万円です。
もちろん、親への支援そのものが悪いわけではありません。しかし、必要額を確認しないまま仕送りを続けるために、自分の教育資金や老後資金の準備が滞ってしまえば、今度は将来、自分自身が子どもの援助を必要とする可能性があります。
親を支えるときこそ、「親はいくら必要なのか」「自分はいくらまでなら無理なく支援できるのか」この2つをセットで考える必要があります。
仕送りをしたあとで、残った後悔
相談の最後にAさんは、父親の口座に残っていたお金について話しました。
「通帳を見ていたら、毎月、僕の名前で5万円ずつ入っているんですよ」
4年間、同じように並んだ入金記録。それを見ているうちに、涙が出てきたといいます。
「僕はずっと『親父を助けている』と思っていました。でも親父からしたら、僕に金を出させていることのほうが心配だったのかもしれないですね」
父親から最後に届いたメッセージ。その真意を知ることは、もうできません。
だからこそAさんには、一つだけ強い後悔が残りました。
「もっと、お金の話をしておけばよかったです」
親子だからこそ、お金の話はしづらいものです。「足りてる?」「貯金はいくらある?」と尋ねることに抵抗を感じる人も少なくないでしょう。
しかし、相手を思ってお金を渡すのであれば、そのお金が本当に必要なのかを確認することもまた、相手を思いやる行為です。親孝行は、「いくら渡したか」だけで決まるものではありません。ときには、「お金、大丈夫?」ではなく、「これからどうやって暮らしていきたい?」と聞くことから始めてもいいのではないでしょうか。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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