9月8日~9月14日の「FX投資戦略」ポイント
<ポイント>
・先週の米ドル/円は一時155円台まで急反落。「高市リフレ」巡る日米間の駆け引きのなかで、財政規律維持への期待から「長期金利上昇=円安」修正を試す可能性が出てきた影響か。
・日本の財政規律への懸念払拭はまだ予断許せないものの、先週の予想より強い米雇用統計発表後の米ドル反発が限られるなど米ドルの上値が重い印象も出てきた。
・今週の米ドル/円は154~158円で予想。
先週の振り返り=週半ば以降、米ドル/円一時155円台まで急反落
158~160円のレンジ下放れで下落が拡大=米ドル/円
先週の米ドル/円は、前週末のウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長の「ジャクソンホール発言」を受けた米早期利上げ観測再燃により160円以上に上昇した水準での取引スタートとなりました。ただ週半ば以降下落に転じると、一時は155円割れ近くまで急反落となりました(図表1参照)。
このように米ドル/円が急落に転じた一因は、それまで続いてきた小動きのレンジを下放れたことだったでしょう。米ドル/円は8月中旬から半月余り、158~160円中心の小動きが続いていました。それを、上述のようにウォーシュ「ジャクソンホール発言」をきっかけとして上放れる可能性が出ていましたが、一転158円割れで逆に下放れとなったことから下落が加速したと考えられます。
円高の理由は日銀利上げ期待の金利差縮小だったのか!?
米ドル/円がレンジを下放れたのは、日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小が手掛かりになったようにも見えます。先週は、日銀審議委員の「タカ派」発言や、そしてベッセント米財務長官による「日本に円高になる政策を期待する」といった発言や日銀利上げ期待発言などから改めて日銀の早期利上げ観測が強まり、そう言ったなかで日米金利差は大きく縮小しました(図表2参照)。
ただ、時間軸を拡大し、米ドル/円と日米金利差の関係を見ると、1年以上前から両者のかい離は大きく広がりました。日米金利差の縮小を尻目に米ドル高・円安が広がってきたわけです(図表3参照)。その意味では、先週急に金利差縮小に円高で反応したというのは少し無理があるようにも感じられます。
「長期金利上昇=円安」の流れが反転
このように金利差で説明できなくなった米ドル高・円安は日本の長期金利上昇に連動したように見えました(図表4参照)。日本の長期金利、10年債利回りは先週ついに3%の大台を突破しましたが、これは高市政権の積極財政に対して財政規律を懸念する影響が主因といった見方が多いようです。
ところが、そういった長期金利上昇は、10年債利回りが3%を超えたところで一服し、先週後半は比較的大きく低下しました。以上のように見ると、先週一時155円近くまで円高に転じたのは、長期金利が低下に転じた影響が大きかったということではないでしょうか(図表5参照)。それではなぜ、「長期金利上昇=円安」の流れが反転したのでしょうか。
ベッセント「リフレを止めるべき」=内閣改造人事観測は財政規律維持の示唆!?
先週、ベッセント長官は、「円高になる政策を日本に期待する」と発言、日銀の利上げへの期待とともに、「日本はリフレ政策を止めるべき」といった考え方も示しました。これは消費税減税や上限を撤廃した概算要求などの高市政権による積極財政政策へのけん制と見られます。
そういったなかで、近く予定されている高市内閣の改造で、自民党の麻生副総裁、鈴木幹事長といった元財務大臣、そして片山現財務大臣が留任する可能性が高いといった報道が流れました。
これは、ベッセント長官からの積極財政へのけん制に対して、高市総理が財政規律を維持するメッセージを返したものではないかとの見方が一部でささやかれました。
以上のように、この間の「長期金利上昇=円安」の流れが先週反転したのは、財政規律への懸念が一服した影響が大きかったのではないでしょうか。
今週の注目点=「高市リフレ」の見直しはあるのか
「長期金利上昇=円安」転換の鍵
高市内閣の改造では、一時は鈴木自民党幹事長や片山財務大臣といった財務省に近いと見られる人物を交代させることで、より積極財政など高市総理の肝入りの政策を進めやすい体制を強化する可能性も取り沙汰されていました。
しかし、これまで見てきたことからすると、その可能性は後退したのかもしれません。それには、協調介入により円安阻止に強く関与したことで、米政府が金融・財政政策にも干渉を強めた影響がやはり大きいということではないでしょうか。
ただ「責任ある積極財政」は、高市政権の最重要政策の1つでしょうから、リフレ政策をどこまで見直すかはまだ不透明でしょう。その見極めが、高市政権発足以降続いてきた「長期金利上昇=円安」の流れが変わるかを考える上での鍵ということではないでしょうか。
今週の米ドル/円は154~158円で予想
今週は月曜日がレーバーデイで米国市場は休場となりますが、例年レーバーデイ明けから実質的に夏休み明けでトレードが本格化することにより一方向へ大きく動く傾向があります。
では、それは155円割れで円高に向かうところとなるのでしょうか。それとも日本の財政規律への懸念などを背景とした「長期金利上昇=円安」が再燃に向かうのでしょうか。
米ドル/円の下値は、テクニカルには協調介入でも割れなかった155円が引き続き注目されます。一方の上値は、先週半ばまで続いたレンジ相場の下限、158円を回復できるかが分岐点でしょう。
米経済指標では、翌週にFOMC(米連邦公開市場委員会)を控えるなかで、CPI(消費者物価指数)などインフレ指標の発表が注目されます。
先週4日に発表された米8月雇用統計で、NFP(非農業部門雇用者数)が予想以上に強い結果となったものの、米ドル/円は157円も超えられなかったところを見ると、米ドル/円の上値が重くなってきた印象があります。
すでに述べた上値の目途の158円を超えられないようなら、ゴールデンウィークの米ドル売り介入再開以降もサポートされてきた155円割れを試す動きになる可能性もあるとの考えから、今週の米ドル/円は154~158円で予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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