「行きすぎ」と「行かなすぎ」…それぞれの背景
高齢者の通院を巡る「行きすぎ」と「行かなすぎ」問題。正田さん夫婦の一見すると対極にある行動には、どちらも高齢期特有の「心と体の変化」が見え隠れしています。
厚生労働省が2026年7月に発表した「国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上で区切れば、67.9%が何らかの形で通院中です。もちろん適切な範囲で治療に通っている人が大半ですが、「過剰受診」に当たるケースもあるといいます。
その背景にあると見られるのが、身体的な不調のほかに、生活環境や心理的な要因です。友人や知人が減り、社会との接点が乏しくなるなかで、顔馴染みのいる病院が「安心して会話ができる居場所」になっているのでしょう。
その一方で、受診を避ける行動もリスクを抱えています。「寝ていれば治る」という過信や、受診の手間・費用の忌避から、病気の早期発見の機会を逃してしまうこともあり得ます。
限界まで我慢した結果、救急搬送や長期入院につながり、かえって本人の身体的負担や医療費が膨らむ事態を招くことも。どうしても受診を嫌がる人には、「年に1回の健診だけは絶対に受けること」など、ハードルを下げてみるのも1つの方法です。
「母にも父にも、それぞれ理由があるんですよね。だから結局、私は『もう病院に行くな』とも、『もっと行け』とも言い切れなくて……」
聡子さんが漏らした言葉通り、どちらの行動にも本人なりの理由が存在します。家族として親に寄り添いながら、医療機関や地域ケアの力も借りて、家族だけで抱え込まない距離感を探っていくことが大切です。
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