「ばあばが出すよ」孫のためなら惜しくなかったお金
一人暮らしをする恵子さん(仮名・72歳)の年金収入は、月約15万円。夫とは10年前に離婚し、現在はローンを完済したマンションで暮らしています。
一人息子の直樹さん(仮名・44歳)は結婚して県外に住み、小学生の子どもが2人います。
孫が生まれてから、恵子さんはさまざまな場面でお金を出してきました。
入学祝いにランドセル代。誕生日には欲しがっていたゲームや洋服。息子一家が帰省すると、「せっかく来てくれたんだから」と外食代も恵子さんが払いました。
さらに、年に数回の帰省では交通費として2万~3万円を渡すこともありました。
「4人で来たら交通費だけでも大変でしょう。孫には会いたいし、『ばあばが出すから帰っておいで』って言っていました」
数年前には、上の孫が始めた習い事について直樹さんから「思ったよりお金がかかる」と聞き、月5,000円を援助するようになりました。
直樹さんから強く頼まれたわけではありません。「自分の生活は年金で何とかなるから」と、恵子さん自身が申し出たものでした。
ただ、年金生活が続くにつれ、少しずつ状況が変わります。
固定資産税やマンションの管理費、修繕積立金に加え、家電の買い替えなどまとまった出費もありました。年金月15万円で毎月余裕があるわけではなく、孫への援助や帰省時の支出は預貯金から出すことも増えていました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得は月平均11万8,465円、消費支出は14万8,445円です。平均では消費支出が可処分所得を約3万円上回っています。もちろん個々の家計状況は異なりますが、年金生活では預貯金の取り崩しが必要になるケースもあります。
あるとき、恵子さんは1年間に孫や息子一家へ使ったお金を計算しました。誕生日や入学祝い、習い事の援助、帰省時の交通費、外食代などを合わせると、40万円近くになっていました。
「こんなに使っていたんだ」
一つひとつは数千円、数万円です。しかし、積み重なると年金2ヵ月分を超えます。次に直樹さんから電話があったとき、恵子さんは初めて伝えました。
「孫には会いたい。でも、お金はもう出せません。これからは自分たちでできる範囲でやってね」
直樹さんは少し驚いた様子でしたが、「分かった。今までありがとう」と答えました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、60歳以上の25.2%が子や孫の生活費を「ほとんど」または「一部」負担しています。70~74歳に限っても22.9%でした。
恵子さんにとっても、援助そのものが特別だったわけではありません。ただ、その金額が自分の老後の家計に見合っているかを考え直す時期が来ていました。
