海外に財産を移しても、外国の税務当局に徴収を要請
国境を越えた滞納にも国税庁は対応している。国際徴収の一つが「徴収共助」で、各国の税務当局が相互主義のもと、租税条約などに基づいて相手国の租税債権を徴収する仕組みだ。
国税庁が紹介する事例では、日本で事業を行っていた滞納者が、所得税や消費税を納付しないまま外国へ出国。これに対し、日本の国税当局が外国の税務当局に徴収共助を要請し、現地の税務当局が滞納者の財産からの徴収に着手した。その後、日本に再入国していた滞納者は、外国で差し押さえなどを受けることを避けるため、日本の国税当局に自主的に納付し、滞納国税は完納となったという。
2025年度の徴収共助は、日本から外国への要請が22件、外国から日本への要請が7件。制度が導入された2013年10月から2026年6月末までの累計では、日本からの要請が146件、外国からの要請が38件となっている。「海外へ財産を移せば、日本の税務当局からは見えなくなる」という時代ではなくなっている。
財産を隠せば刑事告発も
さらに悪質なケースでは刑事告発に至る。国税庁が紹介する事例では、滞納法人の代表者が、課税調査終了後も納付の意思がないまま滞納を続けていたところ、関与税理士から国税当局によって財産を差し押さえられる可能性がある旨の説明を受けた。その後、代表者は法人の預金口座から現金を引き出し、自宅に保管。さらに、代表者が実質的に経営する新法人を設立し、滞納法人に支払われるはずだった解体工事代金を新法人に支払うよう取引先に依頼し、その代金を新法人側で回収していた。
国税当局は、これらの行為が滞納処分の執行を免れる目的で行われた財産の隠蔽に当たると判断し、代表者を国税徴収法違反の「滞納処分免脱罪」で告発した。2025年度の告発は9件、告発された人員は14人(社)に上る。前年度は6件、8人(社)だったため、件数、人員ともに増えている。
税金を払わないこと自体と、差し押さえを免れるために財産を隠すことは別問題であり、後者については国税庁も特に厳正に対処している。
