「掃除、もう終わったの?」都心タワマンで夫婦が驚いたこと
住み替えには、大量の荷物を手放す必要がありました。
子どもたちが残していった家具や学用品、何年も使っていない食器。新居に持っていくものを選ぶ作業には数ヵ月かかりました。
ところが引っ越しを終えると、正志さんが最初に感じたのは「狭さ」ではありませんでした。
「掃除、もう終わったの?」
ある朝、正志さんがそう聞くと、由紀子さんは「とっくに」と答えました。
以前は1階を掃除したあと、階段を上がって2階へ行き、ほとんど使っていない部屋にも掃除機をかけていました。今は日常的に使う空間だけを掃除すれば終わります。
庭の草木も、雨どいもありません。台風が近づいても、庭に置いたものを片づけたり、家の周囲を確認したりする必要がなくなりました。
「家のことを何も考えない日があるなんて、戸建てにいたころは意識したこともありませんでした」
生活そのものも変わりました。
地下や近隣のスーパーへ歩いて行き、外食したければ駅周辺で済ませられます。正志さんは車を手放し、由紀子さんも電車で友人に会いに行く機会が増えました。
以前なら「駅までどう行くか」「帰りは何時のバスか」を考えていた外出も、今では玄関を出ればそのまま始まります。
もちろん、タワーマンションだから負担がなくなったわけではありません。
毎月の管理費や修繕積立金がかかり、将来的に金額が上がる可能性もあります。固定資産税も含め、購入後の住居費を考えておく必要があります。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月の可処分所得は平均22万1,544円、消費支出は26万3,979円で、月4万2,434円の不足となっています。
正志さん夫婦も、年金月34万円だけを見て購入を決めたわけではありません。管理費や修繕積立金などを含めた年間の固定費を確認し、住み替え後にも一定の金融資産を残せることを確かめました。
半年後、正志さんは以前の家の近くを訪れる機会がありました。懐かしさはありましたが、「戻りたい」とは思わなかったといいます。
「前の家は家族4人で暮らすにはいい家でした。でも、今の僕たちには広すぎたんでしょうね」
広い家を手放して小さな住まいへ移ることは、単に生活を縮小することとは限りません。子育て期には必要だった部屋や庭、車が、高齢期には維持すべきものへ変わることもあります。
一方、マンションにも継続的な住居費があり、都心への住み替えが誰にでも適しているわけではありません。大切なのは、長く住んだ家を残すこと自体を目的にせず、現在の家族構成や生活に必要な住まいを考えることです。正志さん夫婦にとって4LDKから1LDKへの住み替えは、暮らしを狭くする選択ではなく、これからの二人に必要のない負担を減らす選択になりました。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

