援助をやめて3ヵ月…母が気づいた「会う理由」の変化
恵子さんが気になり始めたのは、それから数ヵ月後でした。以前は月に2、3回あった直樹さんからの電話が、月に1回あるかどうかになりました。
「今度の連休、帰ってくる?」
恵子さんから電話すると、直樹さんは「今回はやめておくよ」と答えました。子どもの習い事があり、家族4人分の交通費もかかるといいます。それ自体は納得できる理由でした。
しかし、それまで恵子さんが交通費を渡していたころは、年に3、4回あった帰省が、その年は夏休みの1回だけになりました。
「お金を出さないって言ったからかな」
そう考えてしまう自分が嫌だったといいます。だからといって、直樹さんに「援助をやめたから来なくなったの?」とは聞けませんでした。
ある日、久しぶりに電話をしてきた直樹さんに、恵子さんは思い切って尋ねました。
「最近、あんまり電話もないね。忙しいの?」
「ごめん。仕事も忙しいし、子どもたちも土日に予定があるんだよ」
そして、少し間を置いてこう続けました。
「帰省も4人だと結構かかるからさ。今まで母さんが出してくれてたから、気軽に帰れてたんだと思う」
その言葉を聞いて、恵子さんは少しだけ腑に落ちました。
息子一家が帰ってきていたのは、お金をもらうためだったわけではありません。ただ、恵子さんが交通費を負担することで、帰省のハードルが下がっていたことも事実でした。
そして恵子さん自身も、「帰ってきてほしい」という気持ちを、お金を出すことで実現していた面がありました。
「お金を出せば会える、出さなければ会えない、みたいに考えたくなかったんです。でも、私が出していたお金も、みんなが集まるきっかけの一つだったんですよね」
その後、恵子さんは援助を再開していません。
帰省が以前より減ったことには寂しさがあります。それでも、孫の誕生日には電話をし、ときどき写真を送ってもらいます。直樹さんにも「帰ってこられるときでいいから」と伝えるようになりました。
内閣府の同調査では、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出」を挙げた人は25.8%でした。一方、「自分や配偶者等の医療・介護」は47.5%、「趣味やレジャー(旅行等)」は32.4%となっています。高齢期には家族への支出だけでなく、自分自身の今後に必要なお金も考えていく必要があります。
親から子や孫への援助には、生活を助けるだけでなく、帰省や外食など家族が会う機会を作る側面もあります。そのため援助をやめれば、これまでと同じ頻度で会えなくなることもあるでしょう。
ただ、それは必ずしも「お金がなければ続かない家族関係」を意味するものではありません。援助によって成り立っていた部分と、お金とは関係なく続くつながりを分けて考えることで、家族との付き合い方が変わることもあります。自分の生活を守りながら、どのような形なら無理なく家族との関係を続けられるのか。恵子さんにとって援助をやめることは、その距離を考え直すきっかけになりました。
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