審判所は、現金を「生前に贈与されたもの」と判断
審判所は、税務署の主張を退け、Bさんの主張を認めました。
審判所は、言った言わないの水掛け論には立ち入らず、「仮にその発言があったとしても、その発言の中身自体が死因贈与の根拠になり得るのか」という角度から検討を加えました。
決め手になったのは「亡くなったときに残っていた分を分けてほしい」という言い回しです。「残っていた分」ということは、それまでの間にBさんらがお金を使い、金額が減ることをAさんが認めていたことになります。これは「Aさんが亡くなったときに初めて贈与の効力が生じる」という死因贈与の考え方とは、うまく整合しません。
審判所は、この言葉そのものが税務署の主張と整合しないと判断。その発言だけをもって死因贈与の事実を示すことはできないとし、渡された現金は生前に贈与されたものと認めるのが相当だと結論づけました。
発言の一部だけでなく、その論理と整合性まで見極める
この事例では、税務署の主張の根拠は調査の過程で記録された発言でした。
しかし審判所は、その言葉が持つ論理そのものを丁寧に読み解き、発言だけでは死因贈与を裏づけるには足りないと判断しました。
税務調査では、納税者の発言が重要な証拠として扱われることがあります。しかし、発言の一部だけを切り取れば、実際の法律関係とは違った見え方をすることもあります。
今回の裁決は、調査時の発言について、その言葉の意味や他の事実との整合性まで含めて検討することの重要性を示した事例といえそうです。こういった問題が起きることのないよう、まとまった額のお金を渡すような場合には、簡単な書面にしておくことも一つの備えといえるでしょう。
高橋 創
税理士
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