ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
世界の税金はどうなっているのか 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
矢内一好(著)+ゴールドオンライン(編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
相続財産で判断が難しい「貸付金」の扱い
相続税というと、不動産や預貯金といった「いまここにある財産」に意識が向きがちです。しかし、実務上判断が難しいのが、いまここにない「貸付金」の扱いです。身内や友人へお金を貸す場合契約書を作成していないことも多く、実態の把握が困難です。
特にやっかいなのが、返ってくる見込みがない貸付金です。長年返済がなく、時効も過ぎているような場合には、「実質的に価値はないのでは」と考えるのが自然でしょう。
しかし、税務の世界では、この“常識的な感覚”がそのまま通用するとは限りません。今回は、消滅時効が経過した貸付金をどのように評価すべきかが争点となった事例をみていきましょう。
故人が貸したまま返ってきていない金は「相続財産」にあたるか
Aさんは、X社に対して1億1,000万円を貸し付けました。途中でそのうち1,000万円の返済は受けたものの、その後は返済が途絶え、残りの1億円についてそれ以降返済はありません。この貸付金には明確な返済期限や利息の取り決めもなく、いわば「お金は渡しているが長年放置されている」状態でした。
Aさんが亡くなった時点で最後の返済から相当の年月が経っていたため、相続人であるBさんは「すでに時効が成立し、回収は期待できないのではないか」と考えるようになりました。
相続税の計算では、貸付金は原則として元本で評価されます。ただし、「回収が不可能または著しく困難」 と認められる場合に限り、評価額をゼロとすることができます。
Bさんはこの貸付金を「回収が不可能または著しく困難」なものと判断し相続税の対象としませんでしたが、税務署は「回収不能とはいえない」として評価額を1億円とする処分を行いました。
この処分に納得できないBさんは、国税不服審判所で争うこととしました。
本件の争点は下記の2つです。
・消滅時効が経過した貸付金は、「回収が不可能」と認められるか
・債務者である会社の経営状況からみて、回収不能といえるかどうか
つまり、「回収できなさそう」という主観的な感覚ではなく、時効や経営状況といった客観的な根拠をもって回収不能といえるかどうかが争点になります。

