「車がなくても大丈夫」老後を考えて選んだ駅前マンション
「あと何年、車を運転するつもり?」
妻の明子さん(仮名・72歳)からそう聞かれ、夫の昭彦さん(仮名・72歳)は答えに詰まりました。
夫婦は当時、郊外の戸建てで暮らしていました。年金は合わせて月約26万円、預貯金は約3,200万円。住宅ローンはすでに完済しています。
最寄り駅まではバスで20分ほどかかり、スーパーや病院へ行くにも車が便利な地域でした。昭彦さんはまだ運転していますが、70代に入り、夜間や雨の日には以前より神経を使うようになっていました。
自宅にも気になるところが増えていました。築30年を超え、数年前には給湯器を交換。外壁や屋根についても、いずれ大規模な修繕が必要だと言われています。庭の草取りも年々負担になっていました。
「だったら元気なうちに、車がなくても暮らせるところへ移ろう」
夫婦が探したのは、駅やスーパー、医療機関が徒歩圏内にあるマンションです。
最終的に購入したのは、都心へ電車で30分ほどの駅前に建つ築15年のマンション。駅までは徒歩4分で、スーパーは道路を挟んだ向かい側。クリニックが入るビルも近くにあります。
戸建てを売却した資金を充て、約70平方メートルの3LDKを購入しました。
引っ越して間もないころ、夫婦は住み替えに満足していました。
「牛乳を買い忘れても歩いてすぐ行けるんですよ。前なら車を出していたから、それだけでも全然違いました」
昭彦さんも車を手放しました。自動車保険や駐車場代、車検、ガソリン代がなくなり、家計にも余裕が出ると考えていました。
庭の手入れもありません。階段を上り下りする必要もなく、重い荷物はエレベーターで運べます。
「都会なら年を取っても安心だと思ったんです」
ところが、住み始めて1年ほど経ったころ、管理組合から一通の書類が届きました。修繕積立金を見直すという通知でした。
国土交通省『令和5年度マンション総合調査』によると、マンション1戸当たりの修繕積立金は月平均1万3,054円で、2018年度調査の1万1,243円から増加しています。また、修繕積立金が長期修繕計画上の必要額に対して不足しているマンションは36.6%に上ります。
夫婦のマンションも、今後予定される大規模修繕や工事費の上昇を踏まえ、積立額を増やす必要があると説明されていました。
