(※写真はイメージです/PIXTA)

お盆は、離れて暮らす子どもや孫が実家に集まる機会の一つです。毎年の帰省を楽しみに、寝具を整えたり食事の準備をしたりする人もいるでしょう。しかし、子どもが家庭を持ち、孫が成長すれば、長年続いてきた帰省の習慣が変わることもあります。

孫の布団も息子の机も…「また来るから」と残してきたもの

お盆当日、孝之さんからビデオ通話がありました。孫たちとも話し、「今度遊びに行くね」と言われました。

 

電話を切った後、和夫さんが「静かだな」と口にしました。例年なら、テレビの音に孫たちの話し声が重なり、冷蔵庫を何度も開け閉めする音がします。

 

今年は夫婦二人です。昼食はそうめんで済ませ、午後になっても特にすることがありません。

 

「来たら来たで大変だったのにね」

 

幸子さんが笑うと、和夫さんも「勝手なもんだな」と笑いました。

 

数日後、和夫さんが押し入れを整理していると、孫たちが使っていた布団が出てきました。

 

「これ、4組もいらないんじゃないか」

 

「でも、また来るでしょう」

 

そう答えた幸子さんに、和夫さんは「来ても、もう4人で何泊もすることはないんじゃないか」と返しました。その言葉をきっかけに、夫婦は家の中を見直してみることにしました。

 

一室には、孝之さんが学生時代に使っていた机がまだあります。押し入れには昔の漫画や衣類も残り、その横には孫用の寝具やおもちゃが収納されていました。

 

孝之さんに写真を送って確認すると、「もう全部いらないよ。必要なものがあったらこっちに送って」と返事がありました。

 

夫婦は机を処分し、来客用の布団も最低限だけ残すことにしました。

 

空いた場所には、和夫さんが趣味で集めている釣り道具を収納。幸子さんも、居間に置いていた裁縫道具を移しました。

 

息子一家が帰省しなくなったからといって、関係がなくなったわけではありません。

 

孝之さんとは今も電話で話します。秋には、夫婦が孝之さんの住む街へ出かけ、近くのホテルに泊まる計画も立てています。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上の人の近所付き合いについて、「会えば挨拶をする」が84.6%、「外でちょっと立ち話をする」が61.3%となっています。家族と離れて暮らす高齢者にとって、地域での身近なつながりも日常を構成する一つの要素です。

 

幸子さんも最近は、同じ棟に住む知人と買い物へ出かける機会が増えました。和夫さんは、以前から誘われていた地域の集まりにも顔を出すようになったといいます。

 

子どもや孫が帰省する夏は、親にとって楽しみな時間でしょう。しかし、子どもが家庭を持ち、孫も成長すれば、家族が集まる場所や頻度は変わっていきます。

 

今年のお盆、幸子さん夫婦の家は例年より静かでした。ただ、誰かが帰ってくるのを待つためだけの家ではありません。長く残してきた物を整理し、夫婦二人のために部屋を使い直すことも、家族の形が変わった後の暮らしを考えるきっかけになっています。

 

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