(※写真はイメージです/PIXTA)

離れて暮らす高齢の親が普段通り電話に出ていれば、家族はひとまず安心するものです。しかし、電話では分からない生活の変化もあります。久しぶりに実家を訪れたとき、以前とは違う物の置き場所や食事の様子などから、親自身も意識していなかった暮らしの変化に気づくことがあります。

冷蔵庫に並んでいた「同じもの」に息子が覚えた違和感

「母さん、これ全部食べるの?」

 

冷蔵庫の扉を開けた直樹さん(仮名・54歳)は、思わず母の久美子さん(仮名・83歳)に尋ねました。

 

中には、同じメーカーのヨーグルトが10個以上入っています。卵も使い切っていないパックがあるのに、新しいものがもう1パック。奥からは賞味期限を1週間以上過ぎた豆腐も出てきました。

 

久美子さんは夫を7年前に亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約15万円で、預貯金は約1,200万円あります。住宅ローンを完済した戸建てに住み、近所のスーパーにも自分で歩いて出かけていました。

 

直樹さんは仕事の都合で遠方に暮らしており、実家を訪れたのは約1年ぶりです。それでも週に1度ほど電話をしていました。

 

「今日は買い物に行った」「近所の人と話した」と聞いていたため、母の生活を特に心配してはいませんでした。

 

実際、久美子さんの様子だけを見れば、以前と大きく変わったようには思えません。直樹さんが到着するとお茶をいれ、夕食には煮物を用意してくれました。

 

ところが、家の中を見ていると小さな違和感がいくつもありました。

 

洗面所には未開封の洗剤が4本。台所の棚にはラップが何本もあり、同じ種類のレトルト食品も大量に入っています。

 

「安かったから買っておいたの」

 

母はそう答えました。しかし翌朝、さらに気になることがありました。

 

「牛乳がないから買ってくるね」

 

そう言って出かけようとする久美子さんに、直樹さんが「昨日買ったのがあるよ」と声をかけると、「そうだった?」と冷蔵庫を確認します。

 

そこで直樹さんは初めて尋ねました。

 

「母さん、何かあった?」

 

久美子さんは笑って「何もないよ。年を取ったら忘れることくらいあるでしょ」と答えました。確かに、買い忘れや買い過ぎが一度あっただけで、何らかの病気だと判断することはできません。

 

内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上で「自分で食品・日用品の買物をしている」と回答した人は75.5%、「自分で預貯金の出し入れをしている」人は75.9%、「自分で請求書の支払いをしている」人は74.4%でした。高齢になっても自分で日常生活の多くをこなしている人は少なくありません。

 

久美子さんも、その一人でした。ただ直樹さんは、「買い物に行けているから大丈夫」と考えていいのか、分からなくなりました。

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