(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが独立した後も、孫の世話や家族の集まりなどで、親世代が頼られる場面は少なくありません。手助けすることに喜びを感じる一方、それが長く続けば、自分たちの予定を後回しにすることが当たり前になってしまう場合もあります。退職後に増えた時間を、誰のためにどう使うのか。家族との関わり方を見直す夫婦もいます。

「孫たちが来るかもしれないから」予定を空けていた夫婦

「来月の連休、温泉でも行かない?」

 

夫の正彦さん(仮名・68歳)からそう言われたとき、妻の洋子さん(仮名・68歳)はすぐに返事ができませんでした。

 

「その週、麻里たちが来るかもしれないから……」

 

洋子さん夫婦はともに会社員として働き、現在は退職しています。夫婦の年金は合わせて月約30万円、預貯金は約3,800万円。住宅ローンを完済したマンションで暮らしています。

 

長女の麻里さん(仮名・40歳)は、夫と小学4年生、1年生の子ども2人との4人暮らし。実家までは車で40分ほどです。

 

正彦さんの退職を機に、「これからは時間があるから、困ったときはいつでも頼って」と伝えたのは夫婦のほうでした。

 

最初は、麻里さん夫婦がそろって仕事になる土曜日に孫を預かったり、学校行事の際に下の孫を見たりする程度でした。夏休みには数日泊まりに来ることもあり、夫婦も楽しみにしていました。

 

それが少しずつ変わっていったのは、2人とも仕事を完全に辞めてからです。

 

「来週の日曜日、子どもたち連れて行っていい?」

 

「連休のどこかで泊まりに行きたいって言ってるよ」

 

そんな連絡が来るたび、洋子さんは先に自分たちの予定を確認するのではなく、娘一家の都合を予定表に書き込むようになりました。

 

孫が来るとなれば、食事の準備も必要です。泊まるなら布団を出し、翌朝のパンや牛乳も買っておきます。

 

娘から頼まれたわけでもないのに、「連休なら来るかもしれない」と予定を空けておくことさえありました。

 

正彦さんは次第に不満を口にするようになります。

 

「来るかどうかも決まってないのに、なんで俺たちが予定を入れられないんだよ」

 

洋子さんにも言い分がありました。

 

「せっかく孫が来たいって言ってるのに、留守だったらかわいそうでしょう」

 

しかし、そんな生活が3年ほど続いたころ、洋子さん自身も違和感を覚える出来事がありました。

 

大学時代の友人3人から、2泊3日の旅行に誘われたのです。候補日は夏休み中の週末でした。

 

洋子さんは一度、「孫たちが来るかもしれないから」と断りました。ところがその週末、麻里さん一家は家族で出かける予定だったことを後から知ります。

 

予定を空けていた洋子さんは、結局どこにも出かけませんでした。

 

「誰にも頼まれていないのに、私は何を待っていたんだろうと思いました」

 

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上が今後優先的にお金を使いたいものとして、「趣味やレジャー(旅行等)の費用」を挙げた人は32.4%、「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」は25.8%、「友人等との交際費」は20.2%です。

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