(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親と同居していれば、離れて暮らすよりも安心できる面があります。しかし買い物や通院の付き添い、家事などを一人の家族が担う状態が続けば、仕事や自分自身の生活との両立が難しくなることもあります。「まだ介護というほどではない」と考えているうちに、負担が積み重なっているケースもあります。

「一緒に住んでいるんだから」少しずつ増えていった母の頼み事

「悪いんだけど、帰りにスーパー寄ってきてくれる?」

 

仕事を終えた由佳さん(仮名・55歳)のスマートフォンに、母の和子さん(仮名・78歳)からメッセージが届いたのは午後7時を過ぎたころでした。

 

由佳さんは独身で、会社員として働いています。月収は額面で約41万円。父を6年前に亡くしてから、実家で母と二人暮らしを続けてきました。

 

和子さんは年金月約11万円。持病で定期的に通院しているものの、要介護認定は受けておらず、食事や着替え、入浴などは一人でできます。

 

それでも70代後半になると、以前と同じようにはいかないことが増えていました。

 

重い買い物袋を持つのがつらい。遠くの病院まで一人で行くのは不安。電球を交換してほしい。銀行のATMの操作が分からない――。

 

最初のうち、由佳さんも特に負担とは思っていませんでした。

 

「母も年を取ったんだから、私がやるしかないと思っていました」

 

ところが、頼まれることは少しずつ増えていきます。

 

土曜日は母を車で病院へ連れて行き、その帰りにスーパーやドラッグストアへ。平日は仕事帰りに買い物を頼まれ、帰宅すると夕食の支度があります。

 

和子さんも簡単な料理はしますが、「あなたのほうが手際がいいから」と、いつしか夕食は由佳さんが用意する日が多くなっていました。

 

ある金曜日、同僚から食事に誘われた由佳さんは、「母の夕飯があるから」と断りました。その瞬間、自分でも引っかかったといいます。

 

「母は自分でご飯を用意できるんです。でも、私の中で『帰らなきゃ』が当たり前になっていました」

 

総務省『令和4年就業構造基本調査』によると、介護をしている人は629万人。このうち仕事をしている人は365万人で、介護をしている人の58.0%を占めています。2012年の346万人からも増加しており、働きながら家族の介護を担う人は珍しい存在ではありません。

 

もっとも、由佳さん自身は「自分は介護をしている」という意識がありませんでした。

 

母は一人でトイレへ行き、お風呂にも入れます。だからこそ、「このくらいなら私がやればいい」と考え続けていたのです。

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