断って初めて分かった、夫婦の思い込み
転機になったのは、その年の秋でした。正彦さんが以前から行きたがっていた北海道旅行について、「今度こそ予約しよう」と洋子さんに持ちかけました。
ところが日程を決めようとすると、洋子さんはまた「そのころ麻里たちが来るかもしれない」と口にしました。
正彦さんは、「来る予定が決まってから考えればいいだろ。俺たちはいつまで待ってるんだ」と返しました。
その言葉で、洋子さんもようやく、自分たちが娘一家に予定を合わせているというより、娘一家の予定が入る可能性のために、自分たちの時間を空けていることに気づきました。
数日後、麻里さんから「来月の土曜日、子どもたち泊まりたいって言ってるんだけど」と連絡がありました。その日は、すでに夫婦で日帰り旅行を予約していました。
洋子さんは初めて、「その日は予定があるから無理だよ。これからは先に私たちの予定を入れることにしたの」と伝えました。
麻里さんは驚いた様子でしたが、「分かった。じゃあ別の日にする」と答えただけでした。
洋子さんが拍子抜けしていると、後日、麻里さんから「そんなに私たちに合わせてたの?」と聞かれました。娘の側には、両親が自分たちのために休日を空けているという認識さえなかったのです。
夫婦はそれから、家族との付き合い方を大きく変えたわけではありません。孫は今でも泊まりに来ますし、学校行事などで麻里さんから頼まれれば、都合が合う日は手伝っています。
変えたのは、順番でした。
夫婦で行きたい場所や友人との約束があれば、先に予定を入れる。娘一家から誘われたときは、空いていれば会う。「連休だから来るかもしれない」という理由だけで予定を空けることはやめました。
翌年、洋子さんは一度断った大学時代の友人たちと旅行へ出かけました。正彦さんとも北海道を訪れています。
「孫に会うのが嫌だったわけではないんです。むしろ会いたいから、いつ来てもいいようにしていた。でも気づいたら、自分たちが何をしたいかを後から考えるようになっていました」
退職後に増えた時間をどう過ごすかは、老後の暮らしそのものに関わります。家族との時間を楽しみながら、自分たちの旅行や趣味、友人との付き合いも諦めない。その都度予定を確認し合い、無理のない頻度を探していくことが、長く付き合っていくためにも大切でしょう。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

