孫を迎える金曜日、ため息が出るようになった理由
金曜日の夕方になると、恵子さん(仮名・73歳)のスマートフォンには、長女の麻衣さん(仮名・44歳)から連絡が入ります。
「明日、いつもくらいに行くね」
以前なら「待ってるね」とすぐに返信していました。しかし最近は、画面を見ると先にため息が出るようになっていました。
恵子さんは74歳の夫と二人暮らし。夫婦の年金は合わせて月約23万円、預貯金は約1,800万円あります。住宅ローンを完済した戸建てで暮らしています。
車で30分ほどの場所には、麻衣さんが夫と小学3年生、5歳の子ども2人と暮らしていました。
孫たちが毎週末のように遊びに来るようになったのは、3年ほど前からです。始まりは、恵子さんの一言でした。
「土日は暇なんだから、いつでも連れておいでよ」
当時、上の孫は小学校に入ったばかり。下の孫はまだ2歳で、会うたびにできることが増えていく時期でした。
土曜日の午前中に娘一家が来ると、みんなで昼食を食べ、午後は公園へ。夕食まで一緒に食べて帰ることもあります。
恵子さんにとって、それは間違いなく楽しい時間でした。ところが、それは次第に毎週の習慣になりました。
土曜日になると娘一家が来るため、恵子さんは金曜日にスーパーへ行き、孫が食べられるものを多めに買います。当日は朝からリビングを片づけ、昼食を準備。5歳の孫が「公園行こう」と言えば付き添い、帰宅後にはおやつを出します。
麻衣さんも何もしないわけではありません。食器を片づけたり、総菜を買ってきたりすることはあります。それでも、自宅に迎える恵子さんには「何か用意しておかなければ」という気持ちがありました。
夫は孫と遊ぶものの、食事の支度や洗濯、片づけは主に恵子さんが担います。
日曜日の朝、散らかったリビングを掃除してようやく一週間が終わったような気持ちになる。それなのに数日すると、また金曜日がやってきます。
ある木曜日、友人から「土曜日、美術館に行かない?」と誘われました。
恵子さんは予定表を見ることもなく、「土曜日はちょっと……」と断りました。電話を切ってから、自分でも疑問に思ったと言います。
娘から「今週も行く」と連絡が来たわけではありません。それでも、土曜日は孫たちが来る日だと思い込んでいたのです。
「そのとき初めて、私、週末が来るのを楽しみにしてないなって気づいたんです」
