母と確認した暮らしの中身
帰省2日目、直樹さんは母を問い詰めるのではなく、一緒に冷蔵庫や収納棚を整理することにしました。すると、同じ物を買っていた理由が少しずつ見えてきました。
久美子さんは買い物へ行く前、以前は冷蔵庫の中を確認してから必要な物をメモしていました。しかし最近は、「そこまでしなくても覚えている」とメモを作らない日が増えていました。
冷蔵庫の奥に物を入れると存在を忘れ、新しく買ってしまうこともあったといいます。
一方で、生活のすべてに問題が起きているわけではありません。
電気や水道料金は口座振替で滞りなく支払われ、通帳にも不審な出金はありませんでした。薬も決められた通り飲んでいます。近所の友人との約束を忘れている様子もありません。
「だから自分では、何も困ってないと思ってたの」
久美子さんの言葉を聞き、直樹さんも少し納得しました。
直樹さんが心配したのは、現在の買い過ぎそのものより、今後さらに変化があったとき、年に1度の帰省では気づくのが遅れるのではないかということでした。
そこで、まず母自身が受診を希望した場合にすぐ相談できるよう、かかりつけ医について確認しました。また、直樹さんは地域包括支援センターという相談先があることも調べました。
地域包括支援センターは、市町村が設置する、高齢者の総合相談や介護予防などを担う機関です。厚生労働省によると、2025年4月末時点で全国に5,487ヵ所、ブランチを含めると7,374ヵ所が設置されています。介護認定を受けてから初めて利用する場所ではなく、高齢者本人や家族が生活上の心配について相談することもできます。
久美子さん自身も、買い物の仕方を少し変えました。冷蔵庫の中身を確認してから買い物メモを作り、買い置きは決めた場所にまとめます。直樹さんも電話の回数だけを増やすのではなく、ときどき「最近買い物どう?」「困っていることない?」と具体的に聞くことにしました。
その後、直樹さんは以前より短い間隔で実家を訪れることも考えています。
今回の変化だけで、久美子さんが一人暮らしを続けられないと判断する必要はありません。ただ、「自分で買い物へ行ける」「料理ができる」といった一つひとつの行動だけでは、普段の暮らしが以前と同じように送れているかまでは分からないことがあります。
離れて暮らす親の変化は冷蔵庫や日用品、家の片づけ方などに表れる場合もあります。久しぶりに帰省したときに以前との違いを感じたら、何が変わったのかを具体的に確認することが、必要な支援を考えるきっかけになるでしょう。
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