退職金3,400万円は「夫だけのお金」なのか
翌週、理恵子さんは離婚について調べ始めました。そこで初めて知ったのが、財産分与です。
法務省によると、財産分与には、夫婦が共同生活のなかで形成した財産を公平に分配するという性質があります。当事者間で協議がまとまらなければ、家庭裁判所へ調停や審判を申し立てることもできます。
つまり、預貯金などが悟さん名義になっているからといって、それだけで全額が悟さんのものになるとは限りません。
退職金についても、婚姻期間や退職金が形成された経緯などによって財産分与で考慮されることがあります。ただし、具体的な対象額や分け方は個別事情によって異なります。
「3,400万円を半分もらえる、という単純な話でもないんですね」
理恵子さんがもう一つ確認したのが年金でした。36年間の大部分を専業主婦として過ごしたため、離婚後に自分が受け取れる年金額が気になったのです。
離婚時には、婚姻期間中の厚生年金記録を分割できる制度があります。合意分割では、当事者の合意または裁判手続きによって按分割合を決めます。また、2008年4月以降の第3号被保険者期間については、一定の要件を満たせば、相手の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する「3号分割」があり、この部分については相手の合意を必要としません。
ただし、ここにも理恵子さんの思い違いがありました。
「夫の年金そのものを半分もらえると思っていました」
年金分割は、夫が将来受け取る年金額をそのまま半分にして妻へ渡す制度ではありません。対象となるのは婚姻期間中の厚生年金記録であり、分割後の記録に基づいてそれぞれの老齢厚生年金額が計算されます。老齢基礎年金は分割の対象ではありません。
理恵子さんは離婚にすぐ同意せず、まず夫婦の財産を整理することにしました。
預貯金はいくらあるのか。退職金のうち財産分与について検討すべき範囲はどこまでなのか。自宅をどうするのか。そして年金分割をした場合、自分はいくら受給できる見込みなのか。
悟さんにも、離婚後の生活費を単純に「それぞれで」と片づけるのではなく、まず財産について話し合いたいと伝えました。
長く一つの家計で暮らしていると、「夫婦でいくら持っているか」は分かっていても、「一人になった場合に何が残るのか」までは考えないことがあります。
熟年離婚を想定して生活する必要はありません。しかし、離婚だけでなく死別などによって一人で家計を管理する可能性もあります。預貯金や年金、住まいなどについて夫婦のどちらか一方だけが把握するのではなく、それぞれが内容を知っておくことは、老後の生活を考えるうえでも大切です。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

