(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが独立し、一人暮らしになると、長年住み続けた戸建てを持て余すことがあります。部屋数が多ければ掃除の手間が増え、庭や外壁、屋根などの維持にも費用がかかるものです。年齢を重ねるなかで、広さよりも管理のしやすさや住居費を優先し、住み替えを考える人もいます。

「申し込めば入れるわけじゃない」団地への住み替えまで

正雄さんが最初に申し込んだのは、駅から徒歩圏内にある団地でした。スーパーや内科も近く、エレベーターもあります。一人で暮らすには十分な2DKでした。

 

ただし、申し込んだからといって入居できるわけではありません。

 

公営住宅では、空室が出た住宅について募集が行われ、応募者が多い場合には抽選になることがあります。例えば都営住宅でも、定期募集では抽選方式が採用される住宅があり、2026年5月にも抽選方式の募集が行われています。

 

正雄さんは最初の募集で落選しました。

 

「団地なら空いているところにすぐ入れると思ってたんですけど、全然違いました」

 

その間も戸建てには住み続けました。先に家を売ってしまえば、団地に当選しなかった場合に住む場所がなくなる可能性があるためです。

 

数ヵ月後、再び募集がありました。今度は第一希望だけに絞らず、駅から多少離れていても、スーパーや病院へ歩いて行けることを優先して申し込みました。

 

2度目で当選。その後、収入などの入居資格の確認を受け、正式に入居が決まりました。

 

家賃は収入に応じて決まり、正雄さんの場合は共益費を含めて月4万円台。築年数は経っていますが、比較的新しい設備に更新された部屋で、エレベーターもあります。

 

入居先が決まってから、戸建ての売却を進めました。

 

売却価格は約2,300万円。諸費用を差し引いた資金は、今後の生活費や医療・介護への備えとして残しています。

 

引っ越し後、浩二さんが団地を訪ねました。

 

「思ったより良さそうだな」

 

その言葉に、正雄さんは笑いました。

 

部屋は以前の家よりかなり狭くなりました。それでも、使っていない2階や庭はありません。

 

「広い家が悪いわけじゃないよ。ただ、一人で住むにはもう広すぎたんだ」

 

外壁や屋根の修繕を自分で手配する必要もなくなり、庭の草取りもしなくて済みます。

 

一方、団地なら何でも安心というわけではありません。建物によってはエレベーターがなかったり、最寄りの店舗や医療機関まで距離があったりします。希望する住宅に空室が出なければ、募集自体がない場合もあります。

 

正雄さんが重視したのは、家賃の安さだけではなく、一人でも管理しやすく、車に頼らず暮らせることでした。

 

高齢期の住み替えでは、持ち家を手放せば必ず生活が楽になるとは限りません。公営住宅を希望しても、入居要件や募集時期、抽選などがあり、希望した時期に入れるとは限らないからです。

 

一方、子どもが独立した後も広い戸建てを維持するのか、自分が使う広さや将来の体力に合わせて住まいを変えるのか。住居費だけでなく、修繕や掃除、移動など日常的な負担まで含めて考えることで、自分に合った選択が見えてくることもあります。

 

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