FIREは「働かなくてもいい人生」を手に入れることではない
「お金なんか、貯めなきゃよかった……」――そんな考えもよぎりました。しかし、実際にはお金そのものが家族を壊したわけではありません。
「僕はずっと、会社を辞めることばかり考えていました。家族のためだと思っていたけれど、結局は自分が楽になりたかっただけだったんだと思います」
妻から離婚を切り出されたあと、聡さんは弁護士に相談しました。資産について、婚姻前から保有していたものや相続によって取得したものなどは扱いが異なるものの、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成した財産については、財産分与の対象となる可能性があるといわれました。
「実際、妻は働いていますし、実家もあります。財産分与をして僕が養育費を払えば、問題なく暮らしていけるのかもしれません」
それでも、聡さんは諦めたくありませんでした。再び働くことを決意した聡さんは、前のような高収入や管理職のポジションにはこだわらず、知人の紹介でバックオフィスをサポートする仕事に就きました。収入は前職の半分以下ですが、聡さんに不満はありません。
「仕事の目的は給料ではなく、人間らしい生活をするためだから。朝起きて、着替えて、電車に乗って、誰かと話す。それだけのことが、こんなに大事だったんだと気づきました。僕は会社員という“枷”がないと、普通に暮らすこともできないんだと自覚しました」
離婚届は提出されておらず、妻との関係は修復の途中。週末には娘と会い、少しずつ父親としての時間を取り戻しています。
厚生労働省「労働安全衛生調査(令和6年)」では、仕事や職業生活で強い不安やストレスを感じている労働者は68.7%と半数以上。十分な資産がある状況であれば「会社を辞めよう」と思うこと自体に不思議はありません。
しかし、会社員であることから、人間関係から、朝早く起きることから、責任から逃げたかった――。聡さんのFIREは“逃げたい”という後ろ向きなものでした。
FIREとは「働かなくてもいい人生」を手に入れることではなく「どう生きたいのか」を選択できる自由を持つこと。聡さんにとってのFIREは、そのことを学ぶための、あまりにも高い授業料になったのかもしれません。
【注目のセミナー情報】
【事業投資】8月19日(水)オンライン開催
「信頼と安心」のブランド力を活かした
『ECCの個別指導塾ベストワン』という選択
【事業投資】8月22日(土)オンライン開催
ドバイ発「ダイヤモンド事業投資」の最新事情
原石から製品まで一貫管理の独自スキームを公開
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

